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説明された瓶達は見分けがつくようにか、それとも豪華さをアピールするためか、カラフルな瓶たちには綺麗な装飾が施されている。
浴室の壁自体はグレーがかった大理石、床は黒のタイルで、これがまた色をよりキラキラと目立たせ、引き立たせていた。
その煌びやかさに若干頬が引き攣るが部屋も部屋であんな感じだった事だし徐々に慣れていくしかないだろう。幸い普通の男に比べればそういうものに抵抗感はない。だが何故か普段見慣れている浴室とは違い、違和感と閉塞感を感じる。何がそう感じさせるのかはピンとこない。
「大浴場の方は少し歩きますのでご案内出来ないのですが、如何なさいますか?」
「そうですね…。」
それに歩かなければならないと言うことはこの部屋から出なければならない。まだ状況すら正確に把握出来ていない状況で他の人が居るかもしれない所に足を向けるのは良くないと思う。なにより何かあった時に今の自分ではどうする事も出来ない。
元々湯船に浸かる事は大事な撮影前の半身浴くらいでほぼシャワーで済ませていた。今もリフレッシュしたいだけだしここで十分だろう。
「ここでいいです。今すぐ入りたいんですがいいですか?」
しかしシャンプーやボディーソープだけでそんなに種類を用意されてしまったら一々迷ってしまいそうだ。あまりよく見て居ないが確かに洗面所の所にあったシェルフにもずらりと小瓶が並んでいた気がする。今のところこの部屋から出るつもりもないので多分この1週間はこの浴室で入浴は済ませてしまうだろう。
そのときに2つか3つ程使ってみて気に入った香りが決まったらもう少し数を減らして貰えるように頼んでみようと心に決めた。
「承知致しました。使い方などを御説明させて頂きます。」
お願いします、と返事をしてから違和感が何かに気付く。シャワーといえばシャワーノズル、ホース、そしてその先に水栓やレバーがあるものを想像するだろう。
だがこの浴室には、壁の中央上部にノズルが壁から直接生えているんだ。生えているという表現は可笑しいかもしれないが、ノズルをひっかけるための物も無ければ、水を引く為にあるホースも、勿論水栓も見当たらない。
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