寝て起きたら異世界召喚されていた。聖女?冗談じゃないね

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振り返った彼から小さな小瓶を差し出され口元に近付けられる。腕さえも持ち上がらない程、身体に力が入らず、ろくに拒む事もままならないまま、小瓶の中身が口の中へと注がれていく。透明なそれは水のように見えていたが味はとても甘かった。熱の篭った身体にはそれがとても美味しく感じ、飲まないつもりでいたのに気付いた時にはごくごくと飲んでしまっていた。 「う、ぇ、あれ?」 「言葉が分かるか?」 「あ、わ、分かる……分かりま、す。力も入る…え、言葉、なんで?あの?」 「それは良かった。まず、この様な自体になってしまった事を説明したいのだが良いだろうか?」 「え、あ、はい。あの、もう支えて貰わなくて結構です。」 「ああ、承知した。では別室に移動するが歩けるだろうか?」 「たぶん…あ、ありがとうございます。」 驚く事に液体を飲み干すとあれだけ火照っていた熱も引き、身体に力が入るようになった。それだけでなく意味不明でしかなかった言葉が理解出来るようになる。慌てて返した言葉は、自然と日本語では無くなっていた。 困惑する俺に彼は申し訳なさそうにしながら問い掛けていたが、否といえるような雰囲気ではない。 差し出された手に引き起こされ立ち上がり、そのまま手を引かれながら歩き出す。 ところが後ろの男達…魔道士(仮)達は着いてこない様で今気付いたが他にいた騎士みたいな帯剣した体格の良い男、メガネをかけたすらりとした優男、ポニーテールの美青年がぞろぞろと後を着いてきていた。 「こちらへ。どうぞかけて。」 「は、はい。失礼します。」 歩いている間も廊下?とは思えないほど横幅も広く天井も高い。どこの宮殿だと思うほどだ。先程居た部屋もファンタジー小説に良く出てくるようなそれは大きなステンドグラスを誂え、床は大理石、という煌びやかな教会チックな出で立ちで、どこの王宮に迷い込んだんだろうとこの数分で考えているほど普段見慣れたビルなどとは程遠い。 手を引かれつつ歩くこと数分、一般的な扉より一回り大きい扉を兵士のような男数名で開き、中へと通される。
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