愛してる つぐみside

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夕方になり、帰り支度をしていると、スマホに弘毅からラインの通知が来ていた。 アカウントを開いて読んでみると、(つぐみ、仕事終わった?)の文字。 (うん。いま丁度終わったとこ。弘毅は?) (俺はもうつぐみの保育園の近くにいる。迎えにいくよ。) (え?いいよ。恥ずかしいから。) (いいだろ?もう園の前に着いた。) ・・・もう。いつだって強引なんだから。 でもそんなところも・・・好き。 私、いつまでたっても弘毅には敵わない。 私が園の玄関から園庭に出ると、弘毅は真っすぐに私の方に歩いてきて大きく手を振った。 近くで作業していた麗子先生が私の横に立ち、目を丸くして私の肘を突く。 「え?もしかしてあの人がつぐみ先生のラブラブな人?」 「あ、えっと・・・ハイ。」 私は恥ずかしくて下を向いた。 「なにがイケメンかどうかわからない、よ。めっちゃイケメンじゃない!」 「・・・そうですか?」 そうこうしているうちに、弘毅が私の目の前に立った。 今日は濃紺のスーツにブラウンの渋いネクタイ。 わが恋人ながら、やっぱり見惚れてしまう。 「つぐみ、お疲れ。」 「うん。弘毅もお疲れ様。」 弘毅は私に向かって目を細めたあと、麗子先生の方を向いて深くお辞儀をした。 「いつも山本つぐみがお世話になっております。俺は鹿内弘毅と申しまして、つぐみとお付き合いをしている者です。これ良かったら、園の皆さんで召し上がって下さい。」 そう言って弘毅は麗子先生に高級クッキーの缶が入った紙袋を手渡した。 麗子先生はいつもより一オクターブ高い声を出して言った。 「ご丁寧にどうもありがとうございます。ありがたく頂戴します。つぐみ先生、園児に、特に男の子に大人気なんですよ。しっかり掴まえて可愛いライバルに取られないように気を付けて下さいね!」 「ははっ!!貴重な助言、ありがとうございます。肝に銘じます。」 「つぐみ先生。早く帰る支度してきたら?」 麗子先生がそう促してくれるので、私は弘毅に「ちょっとだけ待っててくれる?」と言い残し、園の中に入り、あわてて身支度を整えた。 今日は夜の遊園地デート。 だから黒いパンツにシフォンのブラウスというコーディネート。 ちょっと大人っぽく見せる為に、腕にシルバーのブレスレッドを付けてみた。 そして後ろで結んでいた、肩甲骨まで長く伸びた髪を下ろし、ブラシで整えた。 弘毅はジェットコースターが苦手なのに、私が遊園地好きなのを知っているから、きっと誘ってくれたんだと思う。 夜の遊園地はライトアップが綺麗に違いない。 私が戻ると、弘毅は麗子先生と楽し気に話していた。 こんな些細なことでもちょっと妬けてしまう。 「あ。つぐみ先生が怒っている。」 私に気付いた麗子先生が、おどけた顔をしながら肩をすくめた。 「怒ってなんかいません。」 知らぬ間に私は仏頂面になっていたらしい。 「じゃ、つぐみ、行こうか。」 「うん。」 私は少し上目遣いをしながら、弘毅を見た。 「じゃあ、麗子先生、また来週。」 「はーい。デート、楽しんできてね!」 麗子先生は上機嫌で、私に手を振った。
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