発光板

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「ぼくもう壊れちゃったから、ばらばらにして使っていいよ」  かすれた声で言いながら、ノナは座り込んだ。僕はノナの体から発光板を取り除く。 「ねえねえ、その光る板、集めてるの?」 「うん」 「何に使うの?」 「この星を光らせるんだよ」  僕の答えに、ノナはいまいち納得がいっていないようだった。 「発光板でこの星の地面を覆い尽くして、この星を光らせて、早く誰かに見つけてもらわなくちゃならないんだ」  そんな「誰か」が存在するのかどうかすら、僕は知らない。それなのに僕はここ何日もずっと、この作業を続けている。  もしかしたらこの星を見つけてくれる人なんて、いないのかもしれない、けれど。 「発光板たまったか? 持ってくぞ」 「ほーい、持ってってー」  後ろからリュウに声をかけられて、振り向きもせずに答える。 「あ、危ないよ!」  ノナの指差す方へと視線を上げたとき、もうそのときには手遅れだった。自分が壊れる音が、はっきりと聞こえた。    ——————————  今日からは僕もジャンク品だ。目の前にはリュウがやつれた顔で立っていた。 「ごめんね。僕まで『部品』になっちゃって」 「いや、いいってことよ。気にするな。誰かが見つけにきてくれれば、きっと直してもらえるさ」 「とりあえず、使えそうなものはどんどん取って行ってよ。メモリさえ無事ならそれでいいんだ」  僕の体からも発光体やその他使えそうなものがどんどん抜き取られ、やがてノナたちのいる場所に案内された。  ノナは眠っているのか、身体中の電気を落として全く動く様子がなかった。他にもノナや僕のような者がたくさんいるのだけれど、みんな電気を落としている。僕はノナの傍に駆け寄って、小声で囁いてみた。 「ノナ? ……寝てる?」 「どうだかね」  後ろから突然降ってきた、聞き覚えのない声にびっくりして、勢い良く振り返った。 「地面に発光板敷き詰めたぐらいで、他の星から見てわかるもんかねえ?」 「え……?」 「彼らは本気で『誰かが見つけてくれる』なんて思ってるのかねえ?」  考えてみれば、僕も「もしかしたらこの星を見つけてくれる人なんて、いないのかもしれない」なんて思いながら、発光板を集め続けていた。  作業場の方へ行ってみようとしたが、ダメだった。この場所と外を繋ぐドアは外からしっかりと施錠されていて、もはや僕らは閉じ込められているのと変わりなかった。  僕はもう一度、ノナの前に座る。無性にノナと喋りたかった。 「ノナ、起きてよ……」 「そのノナとかいう子、どうもメモリも抜き取られちまったようだね」 「え……」  さっき僕に話しかけてきた人が、冷たい声で言う。  ノナ、なんでメモリまで……。 「僕たちはもう、ここで朽ちていくしかないの……?」 「恐らく、そうだろうね」 「そっか……」  僕はそっと、ノナの体に触れた。冷たい……。  誰か、誰か、誰か……、見つけにきて。ノナを、僕を、直して……。 「せっかくだし、あんたのメモリももらっとくか」 「え……、なに、言ってるの……?」  彼は僕の体に荒い手つきで触れる。抵抗しようとしたけれど、思うように体が動かない。 「そのノナって子と、お揃いになれるぜ?」  その後も彼は何かを喋っていたけれど、もう僕はそれを聞きとることなど叶わなかった。
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