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縄文人寄りの男
「三並さん、入るよ?」
「いや、もう入ってきてるけど?」
ベッドに寝転んで雑誌を眺めてたナオくんは、どっちかっていうと縄文人寄りの男くさい顔に苦笑いを浮かべて、のっそりと上体を起こした。
この人は今から俺に抱かれる。
小柄なアイドルみたいな俺に、好きなようにされるんは滑稽極まりないと薄く嗤いながら。
「寝といてええのに。……どうせ、横になるんやから」
言うが早いか、俺より大きなその体を押し倒してのしかかるんに、ナオくんは今度ははっきりと、溜息とともに迷惑そうな声をあげた。
「俺、明日、朝番やねんけど」
なら、俺のメールに鍵あけて待つなんて、せんかったらええのに。
そう思ったけど、まあ、断れんだけかと、自嘲がもれた。
「やったら……一回で堪忍してあげるわ」
困ったような顔。
困ったような溜息。
もうここ数年。俺に向けるのはこんな表情ばっかりや。
痛い。
苦しい。
けど。
逃がさへんよ?
「ん……あかんて……小柳……」
耳に唇を這わすのに、ナオくんの体が小さく震える。
この先、自分の身に起こることなんてもう十分すぎるほど知ってるくせに、それでも、最後まで抗おうと俺との間に差し込まれる腕は、俺の心をどこまでも拒否するようで、やっぱりむかついて、その手をとると顔の両脇に縫い付けた。
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