40人が本棚に入れています
本棚に追加
俺かて主人公
覗き込めば、そらされる視線。
ふん。
そんなんではもう、傷つかんし。
「朋生って呼んでくれんかったら、一回ですまさへんよ?……ナオくん」
「………んっ」
それでも。
口を真一文字に結んで、絶対俺の名を呼ぼうとはせんナオくんには、やっぱりちょっと傷つくわ。
毎回のことやのにな。
「はぁ……、んっ…」
無理から呼ばせても、その声に愛がないのなんてわかってるけど。
けど。
ベッドの上だけの錯覚でも。
夢見たいやろ?
固く閉じられた唇は、自分の意思では絶対に俺とキスせんっていう気持ちの表れ。
唾液を絡ませた舌を強引にねじ込んでも、今度は噛み締められた歯に進入を拒否される。
「ナオくん……」
お願いやから、俺を見て?
「……ナオくん…」
お願いやから、俺を、受け入れて?
「キスさせてくれへんなら、俺、なかなかイカれへんから、朝になるかもよ?」
脅迫して手に入れた関係は、決してその形を変えることはない。
「……ふっ、んんぐっ」
それでも、渋々緩む咬合の隙間を縫って、その縮まった舌を吸い上げれば、ほんのちょっとだけナオくんの体が緩むから、せめて、変わらないままでそこにある関係に、縋りつくんや。
どうせ俺なんて、あんたの物語のメインにはなれへんの、わかってる。
でも俺には俺の物語があって、そこでは俺は、主役やねん。
最初のコメントを投稿しよう!