俺かて主人公

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俺かて主人公

 覗き込めば、そらされる視線。  ふん。  そんなんではもう、傷つかんし。 「朋生(ともき)って呼んでくれんかったら、一回ですまさへんよ?……ナオくん」 「………んっ」  それでも。  口を真一文字に結んで、絶対俺の名を呼ぼうとはせんナオくんには、やっぱりちょっと傷つくわ。  毎回のことやのにな。 「はぁ……、んっ…」  無理から呼ばせても、その声に愛がないのなんてわかってるけど。  けど。  ベッドの上だけの錯覚でも。  夢見たいやろ?  固く閉じられた唇は、自分の意思では絶対に俺とキスせんっていう気持ちの表れ。  唾液を絡ませた舌を強引にねじ込んでも、今度は噛み締められた歯に進入を拒否される。 「ナオくん……」  お願いやから、俺を見て? 「……ナオくん…」  お願いやから、俺を、受け入れて? 「キスさせてくれへんなら、俺、なかなかイカれへんから、朝になるかもよ?」  脅迫して手に入れた関係は、決してその形を変えることはない。 「……ふっ、んんぐっ」  それでも、渋々緩む咬合の隙間を縫って、その縮まった舌を吸い上げれば、ほんのちょっとだけナオくんの体が緩むから、せめて、変わらないままでそこにある関係に、縋りつくんや。  どうせ俺なんて、あんたの物語のメインにはなれへんの、わかってる。  でも俺には俺の物語があって、そこでは俺は、主役やねん。
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