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自分なりのルールやわ
ナオくんに視線を残したまま、性器を見立てて茶色の瓶に舌を這わせる俺に、ナオくんの顔が引き攣る。
「またまた、小柳くんはそんな冗談を……こらっ!!!」
開いた方の手でナオくんの肩を押して圧し掛かる。
行為の名残の熱を帯びた片方の太ももを引き上げる俺を、なんとかどかそうと手を突っ張ってくるけど、その力は本気で出してるわけやない。
それが俺の行為を心の奥では望んでくれてるから、とかなら俺は救われるけど、それは全然そうやなく。
ナオくんが本気だしたら、小柄な俺は軽く吹っ飛ばされるから。
そんでナオくんは、それを怖がってるからってだけの話。
前科があるからな。
「ちょ、ほんま頼むっ。小柳!!」
「よし。頼まれた。期待に添えるよう精進するわ」
「ちゃうわ、あほうっ!!」
普段は髪の毛で隠れて見えんけど、俺の即頭部には縫合の痕がある。頭の傷は派手やから、あの日、ナオくんの部屋の床は赤い飛沫模様になったっけ。
中学生の俺に犯されかけた被害者。
それがナオくんの立場やったのに。
俺の怪我のせいで二重の枷を背負ったナオくんは、俺を、拒めなくなった。
や。ちゃうな。拒んでる。
心は、俺を受け入れてくれることなんてないやろう。
やから俺も、弱みにつけこむことを、やめたりせんのや。
心が無理なら。
体だけでも。
逃がさへん。
「ナオくん。これ、飲み口のとことかポコポコしてるから、きっと、エエよ? あれ? もしかして、ナオくんのお口には、反対側のほうが、好み、かな?」
「……ちょ…まじ…やめっ!!」
すっかり緩んだ後孔に瓶の飲み口をあてるのを、なんとか逃れようと尻を振るナオくん。
「そんな煽られたら、瓶だけで済まんくなるよ?」
「ちゃうわっ!ふざけ……ちょ、もうっ!!…………トモキッ!!!!」
「………」
名を呼ばれ、思わず手が止まる。
喜びが、体を支配する。
毛穴が全部、いっぺんにひろがったみたいな。
そんな。
そんな───。
「おもんない。もう部屋かえる」
受け入れてはもらえん俺の。
俺なりのルール。
絶対に「好き」っていわんこと。
もう一つが。
情けない顔を。
見せんことや。
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