死ぬ時って本当にあっさり

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「社長、大丈夫でしたか?」 その時、レイさんの声が耳に届く。 思考を目の前に切り替えると、レイさんがしゃがんで俺と向き合っていた。 ほっとしたような、心配しているような顔をして俺をのぞき込んでいる。 「お怪我は?嫌なことされませんでしたか?」 「え?あぁ…別に…」 少し青みがかったきれいな瞳に俺が映り込み、思ったよりも距離が近いことに気がついた。 どう見ても服装的に全然大丈夫じゃないのはバレバレなのだけど、わざわざ申告するのも恥ずかしいので小さく返事する。 「待っていてください、今ほどきます」 レイさんは唇で自身の手袋を咥えて外すと、手慣れた手付きできつく縛られたロープをほどき始めた。 それをただ静かに見守る。 こんなみっともない姿をまた見られて少し困ったが、それよりも…。 「なんで…ここに…」 純粋にそんな疑問が浮かんだ。 そして無意識に口に出していた。 帰ったものかと思っていた。 だって、明かりはこの部屋しかついてなかったから。 それかこっそり残業していたのか?
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