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「最後に兄が言ったんだ。オレジャナイって」 「えっ?」  緩んでいた気持ちが再び引き締まる。唖然としていると、急に車が速度を上げ始める。左手にはガードレール。向こう側は闇が手招きしていた。対向車線には車が一台も通っておらず、危ぶむ人間は誰もいない。 「おいおい。悪かった。全部俺のせいなんだ」  身の危険を感じ、角元は下手にでる。それでもなお、スピードは緩むことなく、異様な音が車内に響く。 「怖かったんだ。捕まるのが! 悪かったよ。このあと自首するから……な?」  今は宥めるのが先決だった。佐々木の弟がまさか、復讐するために自分に近づいたなどとは、角元は想像だにしていなかった。 「その必要はない」  佐々木の一言に、角元は呆気に取られる。依然として緩まない速度に、許された気配はない。 「……どうして」  真っ直ぐ見つめる佐々木の視線の先を角元が追ったとき――前方のガードレールが、大きくカーブを描いていた。 「兄が死んで、あの場所が心霊スポットと呼ばれるようになった。だから今度は、あんたがこの場所を心霊スポットにするんだよ」  全開にまで踏み込まれたアクセルが、轟音を立てていた。やめろという叫びが、車内に響くと同時に、激しい衝撃が車を襲った。
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