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「噂のガードレールって、これだな。ここだけ真新しい」
男が向けた懐中電灯が、白いガードレールを照らし出す。隣に並んだサビの浮いたガードレールの対比を示すように、光を交互に動かす。その様子を別の男が、カメラに抑えていた。
「噂によると、十五年前にあったトンネル事故で亡くなった男子大学生の知人が、ここで事故にあったとか。その知人というやつが、いじめていたって噂もあって、呪いのせいだとも言われている」
「うわー怖いですね」
カメラを持つ男の悲痛な声に、「でも、それ以上に怖い噂があるんだ」と男が不敵な笑みを浮かべる。それからガードレールの下に向かって懐中電灯を向けた。照らした先には暗い闇が沈み、小さな明かりは簡単に吸い込まれてしまう。
「発見された時、車内には助手席に座った男の姿しかなかったらしい。車は大破。運転席もぺちゃんこだったのに」
カメラの男が近づき、ガードレールの向こう側を映し出す。落ちたら即死。誰がどう見ても、絶望的な状況だ。
「それなのに、運転席には誰もいなかった。血痕どころか人がいた痕跡もなかったんだ。誰が運転していたのか……五年経った今でも、謎のままらしい」
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