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エピローグ
私は家に帰ると、ママと顔を合わせたくなく、防音室の扉をわざと大きな音で閉めた。
ママが、部屋に入ってこれるように鍵は開けたが、入ってくる気はなさそうだ。
「まぁ、こういうもんだよね。」
音楽にすべてを捧げた家族に愛を求めるのは無理があるかもしれない。
私がママに言い返したことを思い出すと、かなりひどいことを言っていたし。
話し合うのはいつでもいいけど、謝らなくちゃ。
私はそう決心すると防音室の扉を開けた。
次の日
3時。彼とやっと思いが通じたのだ。早く出なければ。
ママに謝ることはできたし。私が謝るとママは泣き崩れた。その時ママのほうが子供だということがわかった。
通り道を走ると、彼へ一歩づつ近づいていったような気がした。
海に来た。トランペットの音は聞こえない。
代わりに濁ったさざなみが聞こえる。
その時、海のそばを引越センターのトラックと車が通った。
車に彼がいる。そう確信を持ったが確かではない。
あれ、そういえば彼私の名前知ってたんじゃない。きちんと自己紹介はしていないはずだ。まさかあのときの大声が聞こえていたのか?
その答えはこの海だけが知っているような気がした。
fin
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