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これが私の婚約者、魔物の国のラーナ王子様だ。
「ようこそいらっしゃいました! お疲れでございましょうっ。お部屋をご用意しておりますので、先ずはそちらへどうぞっ」
顔を引きつらせ声を上ずらせながら、宰相も挨拶する。
「ゲゴ」
「ありがとうございます。では、晩餐まで休憩させていただきます」
王子の後ろに控えていた狼獣人の従者が代わりに応える。蛙が狼より上の立場ってどういうことなのか。狼は人語を喋ることができるのに、蛙だと出来ないその差はなんなのか、毎度のことながら興味は尽きない。とはいえこの緊迫した空気では訊くことがはばかられた。
ラーナ王子とその御一行様は、年に一回我が国にやって来る。両国の友好が確固たるものであることを国の内外に知らしめること、が表向き。真の目的は、許嫁である私がちゃんと注文通りに健康に育っているか、見に来るためだ。
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