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真面目な表情で私をまっすぐ見据え、それだけ言って黙り込む。確かに蛙にキスをするなんて、普通の人なら絶対しない。私だって、畦道で鳴いている蛙を捕まえていきなりキスしろなんて言われたら、断固として抵抗する。でもそれがいつもの小ラーナ様だったら?
「……します」
うなずいたついでに目線を下ろし、うつむいた。顔が熱い。心臓が痛いくらいにドキドキしている。蛙だろうと他の獣人だろうと構わない。それがラーナ様であるのなら、どんな外見でも気にはならなかった。
「ありがとう。それじゃあやり直すね」
その言葉とともに、目の前の人がいなくなる。そしてそこにいるのは、ある意味見慣れた蛙。
「ラーナ様?」
「ゲゴ」
いつものやり取りに安心して、微笑んだ。手のひらを差し出すとラーナ様が乗ってくる。そのまま自分の顔に近付けると、私は躊躇いなくキスをした。
途端にポンッと軽い衝撃が起こり、体が揺れたと思ったら抱きしめられる。
「イルダ、好きだ。愛している!」
「え? えー?」
「なんで? そんなにびっくりすること?」
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