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蛙と今の姿の振り幅が大きすぎて、戸惑う自分がいる。あと、結婚したらそこでひとのみされておしまいだと思っていたので、その後のことを考えたことが無かった。色んなことが起こりすぎて、臆病になってしまう。
そんな私の肩に、ラーナ様のおでこがそっと乗った。
「ラーナ様?」
「蛙の自分に、本当の自分が負けるとは思わなかった」
「ええっ?」
その解釈に焦っていると、顔を上げたラーナ様と目が合った。
「ゲゴ」
拗ねたような口調。魔物の王子様なのに、何も持たない生贄の姫である私に、愛を乞う。その姿に、直前の自分の行動を思い出した。どんな姿でも、ラーナ様はラーナ様。そう思ったから、ためらいなくキスをしたんだ。
自分を救った蛙の魔物とこの美しい人が自分の中でひとつに繋がる。ラーナ様からの好意を素直に受け止めることがようやくできて、自然と笑いが込み上げてきた。
「……ふふ」
「ねえ、イルダ」
拗ねて不安そうだったラーナ様の表情も笑顔に変わる。そしてこちらを見つめ、囁かれた。
「俺もイルダにキスしても、いい?」
「え?」
キス? キスとは?
「私は変身していません!」
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