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「わからないから、確かめさせて」
返事をする間もなく王子の顔が近づいて、柔らかな感触が唇に当たる。思わず目を見開いたらそれはあっという間に離れ、ラーナ様がにんまりとした笑顔をみせていた。
「これでイルダは俺の恋人だ」
「なっ、」
なにを言っているんですか?! とか、それ変身に関係無いじゃないですか! とか色々叫びたいことがあったけれど、目の前の満足そうな笑顔で全てかき消されてしまう。そして幸福顔の王子様は、さらに私の心を揺さぶる疑問を投げかけて来た。
「ところでなんでイルダは薬を使ってまで、俺の真の姿を確認しようと思ったの?」
「そっ、それは……」
にこやかな微笑みなのに、なぜか圧を感じさせる。
「話さないと、本当にイルダのこと食べちゃうよ?」
言われて小さく息を呑んで、それから勇気を出してラーナ様をまっすぐ見つめた。
「……それでも、いいです」
「へ?」
「知りたかったんです、ラーナ様の気持ちが。どうせ食べられるなら、少しでも私のことを好ましく思っていただけていたらいいなと思って。ただの生贄じゃない、私だって認識した上で食べてもらいたかったから」
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