35人が本棚に入れています
本棚に追加
言い切った後、しばらく沈黙が続く。呆気にとられた様なラーナ様の表情を見て、しまったと後悔した。魔物の王子様に向かってしがない生贄の姫が真意を訊くなど、だいそれたことしてしまったんだ。
「……ごめん」
「え?」
今度はラーナ様が私の肩をそっと押し、二人の間に空間が作られた。なにかを堪えるように唇をかみしめてうつむくと、急に決意したように顔を上げて宣言される。
「前言撤回する。イルダのこと、食べさせて」
「はい?」
距離を離したかと思うと今度は逆に、勢いよくぎゅっと抱きしめられる。聞き返すその声を塞ぐように、唇が重ね合わさった。先程のようにすぐには離れずにさらに接着面が広がり、キスが深くなる。
「ラーナ様、んっ」
呼びかけるために口を開いたら、そこからぬるっと舌が入って来た。
「んっ、ん……」
私の舌がラーナ様の舌と絡み合わさる。初めての感触だけれど、その気持ちよさにゾクゾクとした。口内であやすように、撫でるようにラーナ様の舌が動き、それに翻弄されて私の頭が揺れる。支えるように後頭部に手が添えられ、与えられた安定感に彼の手の大きさ、力強さを実感した。
最初のコメントを投稿しよう!