その5

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 言い切った後、しばらく沈黙が続く。呆気にとられた様なラーナ様の表情を見て、しまったと後悔した。魔物の王子様に向かってしがない生贄の姫が真意を訊くなど、だいそれたことしてしまったんだ。   「……ごめん」 「え?」  今度はラーナ様が私の肩をそっと押し、二人の間に空間が作られた。なにかを堪えるように唇をかみしめてうつむくと、急に決意したように顔を上げて宣言される。 「前言撤回する。イルダのこと、食べさせて」 「はい?」  距離を離したかと思うと今度は逆に、勢いよくぎゅっと抱きしめられる。聞き返すその声を塞ぐように、唇が重ね合わさった。先程のようにすぐには離れずにさらに接着面が広がり、キスが深くなる。 「ラーナ様、んっ」  呼びかけるために口を開いたら、そこからぬるっと舌が入って来た。 「んっ、ん……」  私の舌がラーナ様の舌と絡み合わさる。初めての感触だけれど、その気持ちよさにゾクゾクとした。口内であやすように、撫でるようにラーナ様の舌が動き、それに翻弄されて私の頭が揺れる。支えるように後頭部に手が添えられ、与えられた安定感に彼の手の大きさ、力強さを実感した。
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