木場沙也加⑧

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 ジェットコースターのような人生を送ってきた旬に、沙也加は驚く。「大変だったんだね」 「まあ」今となっては、もう、過ぎたことだと旬は言った。 「ねえ」 「なに」 「もうしない?」 「何を」 「襲ったり、しない?」 「しない」 「絶対?」 「ああ」 「ほんとに?」 「くどいな、しないったらしないよ。あの時は俺もどうかしてた、だから反省して、こうしてここにいる」 「わかった、じゃあ許してあげる。剣道、頑張ってね」 「あ、ああ、ありがと。って、お前も剣道しなきゃだぞ」 う、ん、と口ごもる沙也加。「あ」と顔を上げる。 「なに」 「道場、再建できるといいね」  ああ、と歯切れが悪くなる旬。「道場のこと、まだ誰にも言ってないんだ。あんたが初めてだ」 「え」  沙也加の声を待つことなく、旬は「じゃあ」と踵を返した。  どんどん小さくなる旬の背中を見つめている沙也加。旬の姿が見えなくなっても立っていた。  いつの間にか、白いものがちらほらと舞っている。               (了)
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