木場沙也加⑧

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 ところで、と沙也加は市民大会でのことを問いただした。  旬は「わるかった」と素直に詫びた。 「謝るくらいなら最初からしないでほしい」 「どうにでもしてくれ、何でもする」 「じゃあ、わたしの、奴隷に、なって」 「わかった」 「え?」  あっさり受け入れられたことに、沙也加は拍子抜けした。振り上げたこぶしをどこへ卸せばいいのかわからなくなってしまった。 「時間がある限り会いに来る」と旬は言い、この日は去った。  沙也加は断らなかった。  それから数日後、年の瀬も迫ったころ、沙也加はそわそわしていた。  剣道部の練習は例の事件があったので、冬休み中は活動を自粛ということになっている。 なので、沙也加は家にいる。  警備員の父は、盆暮れ正月ゴールデンウィーク関係なし。今日も朝から仕事に行った。  母の沙羅はこれから仕事に行こうとしている。年末でも臨時保育があるのだという。  沙也加は黙っていられず、口を開いた。 「今日、お手伝いが来るよ」 「誰、どんな人」母は目を輝かせた。 「宇津井旬」 「もう」 「なによ、もうって」 「もうそんなに仲良くなったのかって」 「違うから。違います」 「まあいいけど、仲良くね、あ、買い物お願い、よろしく」 「はあ?」
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