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何を言うのだこの人は。島津がいたときも変なことを言っていた。
わたしのことをわかっているのか。
沙也加は疑心暗鬼で「いってらっしゃい」と沙羅を送り出した。
やがて旬はやってきた。沙也加は旬に対し、使い走りのようにあれこれと用を言いつける。
家の掃除、買出し、庭の掃除。旬は黙って従う。
だが、すぐに沙也加は持てあまし始めた。
もともと女王様のように上から目線で人を扱うことには慣れていないし性分でない。
自分の心はどうなのかと改めて自分に問うてみた。
釈然としないまま考えあぐねていた沙也加は、母から買い出しを頼まれていたことを思い出したので、旬を連れ出した。
スーパーまでは徒歩で約十二分の距離だ。
買い物を旬に任せ、沙也加は店内をうろついた。
そういえば、自分は旬のことは何も知らないことに気づく。
帰り道。「ねえ、あなたのことを教えて、話して」と旬を促した。
「え、それは」
これには旬が躊躇した。
「わたしの命令よ。これに答えたら今日は帰って良し」と沙也加は強気で言った。
「わかった」と旬。
旬は、歩きながら、顔を上げ、灰色の空に書かれた原稿を読み上げるように話し出した。
ぽつりぽつり、とぎれとぎれになりながら、話した。
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