水曜日、午後3時。

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午後2時40分、5時間目が終わり50分頃には校庭に並ぶイチョウの木の前に家が同じ方向の児童達が下校班ごとに集まりだす。 キャーキャー楽しそうに友達と騒ぐ低学年を横目に私たち6年生はさっさと門を抜ける。 「3時に公園集合、3時1分解散」 しゅん君と決めた約束。 2人だけの秘密。 校門を出て5分ほどの所にその公園がある。 ブランコ、滑り台、水道と時計しかない団地の中にある小さな公園。 わたしは入り口でしゃがみ込み公園の木に後から付けられたであろう無造作に引っかけられた時計をチラッと見上げる。 2時59分。 緩くなった靴紐をゆっくりほどき、またゆっくり奇麗なリボン結びを作り時間をかけて両足キツく結び直す。 ちょうど結び終わった時、しゅん君は私の肩をそっと優しく叩く。 「行こう」 2人並んで歩き出す。 「今日は成功!」 しゅん君は嬉しそうに笑ってから変顔を突き出しわたしを笑わせてくる。 「なにその顔〜やめてよ〜」 怒りたいのに溢れてしまう嬉しさがわたしの顔をとびきりの笑顔に変えてしまう。 2人だけの約束、水曜日だけの約束。 周りの友達にバレないように、冷やかされないように、偶然を装う。 公園から10分ほど2人でゆっくり歩くと家の方向が違うしゅん君は右に曲がり歩道橋を登って行ってしまう。 「じゃあな!」 「バイバイ」 私はわざと素っ気なく別れを告げ歩道橋とは反対方向に進む。 寂しいけど、もっとしゅん君と喋っていたいけれど、そんなの感じさせないように素っ気なく。
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