35人が本棚に入れています
本棚に追加
上総は出遅れた
中村の店(現住居)にパスホートを取りに帰ったお陰で空港に着いたのは夕方になってしまった。
「チッ! すっかり夜だよ····直也が居ることを願うぞ」
上総はブスくれながら舌打ちをする。
「そう、 ボヤくなよ。 もしかしたら居るかもしんねぇだろ」
中村は焦る気もなく上総の車椅子を押しながら喫煙所を探す。
「あった、 あった~。 上総、 一服しような」
中村はヒョイヒョイと車椅子を押して喫煙室に入ろうとした。
「中村さん! ちょっと待てよー! 」
「なんだ? 俺はヤニ切れしてんだよ」
中村はポケットからショートホープを取り出しすぐさま火をつけようと口にくわえている。
「チケット売場に直也らしいのが居るんだよ! 中村さんはタバコ吸っててくれよ! 俺、見てくるからさ」
「上総ー! 行き当たりばったりで行動するなよ! 俺が吸い終わるまで待てよ」
中村の声は上総には届かない。
(あの野郎····勝手に行きやがったな)
中村は吸い終わる前にタバコを消して上総を追いかけた。
最初のコメントを投稿しよう!