思い出して…

美香のスマホを確認するとトップ画面にもホーム画面にも俺とのツーショット写真が登録されていた。

なんで俺とのツーショット？
大学で撮った写真か？
先輩と後輩の関係なのに写真を登録するってことは、やっぱりストーカーだったのか……？

目につくところに日記のアプリがある。
どうやら一言日記のようだ。
でも俺を付け回した犯人であれば……ストーカーであれば日記に何か手がかりがあるかもしれない。

そう思って確認していくうちに涙が出てきた。
息もしっかり吸うことが出来ない。
ガタガタ震えてスマホを何度も何度も落としてしまう。

俺は……
彼女になんて事をしてしまったんだ。

〇〇年
〇月△日
先輩カッコよすぎる、話してみたい！

〇月△日
先輩と話したいから先輩が入っているサークルに入った！

〇月△日
先輩と話せた！嬉しい！かっこいい…

〇月△日
サークルに入って1週間。先輩と毎日話せて幸せ

〇月△日
先輩の連絡先をゲットした！嬉しい

〇月△日
先輩と毎日連絡している、幸せ

〇月△日
先輩と付き合うことになった！幸せすぎてどうにかなりそう！！

〇△年
〇月△日
大学を卒業しても先輩って呼ぶのが抜けない…
先輩からははやく呼び捨てで呼んで欲しいと言われる
でも照れるから無理！！！

〇月△日
先輩から婚約指輪を貰った。幸せ！幸せ！幸せ！だいすき！

〇月△日
結婚式場を見学！結婚式を挙げたら名前で呼ぼう！喜ぶかな

△月〇日
事故に合ったみたい…先輩は大丈夫なのかな…

△月〇日
先輩は記憶障害になってしまった…私のことは後輩としか覚えていない…

△月〇日
婚約者と伝えても記憶が混乱しているのか、次の日にはまた後輩に戻っている

△月〇日
先輩はどうやら毎日サークルに顔を出しているらしい
後輩たちには私から記憶障害の事を伝えて、どうにか穏便に済ませてもらった

△月〇日
毎日先輩が心配でコソコソと付け回してしまっている
もうやめないと…私のこと思い出して…

△月〇日
あの日の約束…もう忘れてしまったの…？
思い出して……私は先輩のことだいすきなんだよ…

△月〇日
先輩の家に行く。用心深い性格だからきっと家に入れてくれない。だって後輩の私には家を教えていないもんね……なんとか考えてみよう……

それ以降の日記は更新されていなかった。

あぁ……そうだ、思い出した。

美香は俺の婚約者だ。
そうだ…結婚するはずだったんだ……
なのに……

美香……

ーーーーーー半年後

俺は記憶障害を乗り越え、会社で働いている。
婚約者の美香は行方不明になってしまった。
周りの人間は俺を腫れ物かのように扱う。
でも俺は毎日幸せなんだ。

「美香……ただいま、愛しているよ。これから先何があっても何が起ころうともずっと一緒だよ」

そう言って大型冷凍庫の扉を閉める。

美香……
俺はあの日の約束をずっとずっと忘れないよ。
2人で誓い合った、約束。

永遠に一緒にいようね