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通帳
六つ目のペンギンの形の壺が家に来るころには、俺は高校生になっていた。
もはや若いとは言えないかつて若かった二人組の女は、親父の留守を知るとそのまま帰ろうとしたが、俺は彼女らを部屋に入れた。
そして、一体今まで二人が我が家に何をしてきたのか直接聞いたのだった。
その内容は、予想をしていた内容と同じだった。
二人は俺を取り込もうとしたのか、急死した祖母の話とあろうことかアルセーヌの話をし始めた。いい話ではなかった。
俺はブチ切れて立ち上がった。
そして、二人が持ってきたペンギンの壺を壁に投げて叩き割った。
二人の女が叫んだ。
そこへ親父が家に帰ってきた。
親父は女たちに詫びると俺を殴った。
俺は床に置いてある壺を、一つ一つ蹴飛ばして壁にぶつけては割っていった。
親父は半狂乱になって俺にしがみついた。
最後の一個を足に反動をつけて思い切り蹴飛ばし、壁にぶつけて割ると、俺を捕まえていた親父の腕の力が抜けた。
「お前は俺の息子じゃない」
親父はそう言った。
「出てってくれ」
親父は静かに言った。
「かあさんもこうやって追い出したのかよ」
「お前には関係ない」
「出てってやる。親父、狂ってる」
二人の女はいつの間にか姿を消していた。
俺は、着替えと通帳だけリュックに詰めると家を出た。
通帳を開くと、俺が小さなころからためていた貯金は、知らぬ間に残金が無くなっていた。
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