はじまりの日【2】

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はじまりの日【2】

「案外近いんだね」 「春休み中に何回か通ったからそのとき時間計ったんだけど大体15分かかった」 「それぐらいか」 「実弥!」 校門に入るとすぐ菜莉の声が聞こえた。菜莉を探すとこちらに走ってきているのが見えた。 「菜莉ー!ってうわっ!?」 そのままの勢いで抱きつかれる。 「久しぶり~!」 「そうだねっ…」 「ちょっと離れろ」 琉斗に引き剥がされてしまった。 「何?そんなに許嫁ちゃんのそばにいたいわけ?」 「悪いか?」 …この2人仲悪いんだよなあ…。 「お、集ってる」 すると、後ろからまた声が聞こえた。 「拓実と海志!久しぶり!」 振り向くと、また見慣れた人が立っている。 菜莉と海志は小学校から、拓実は幼稚園から一緒だ。 …拓実も制服似合うなあ…。 背が高い拓実は制服がよく似合っていた。 「なんか、また同じメンバーが集まったね」 「だな」 拓実はそう言って小さく笑う。 「早くクラス表見に行こうよ」 菜莉がそう声を掛ける。 「はーい」「ん」「知ってる奴いるかな」「さあな」 私が、琉斗が、拓実が、海志が、返事をする。 「私はまだ決めてないんだけどみんな何部入るの?」 そう聞くと各々から返事が返ってくる。 「僕もまだ。入るなら文化部」 「私絶対調理部!あと、テニスも!」 「俺は陸上かなやっぱ」 「……俺、手芸部」 みんなで海志の方を見た。海志は裁縫が得意なのだ。 「良いと思うよ」 菜莉がそう言った。弾かれたように顔を上げた海志の頬が緩んだ。少し長い緑の髪が揺れる。 …海志って菜莉のこと好きだよね…。 私は立ち止まって空を見上げた。琉斗も横で止まってくれる。 「快晴だ」 「だね」 私達は見た目も、性格も、好きなこともみんなバラバラ。 …でも、違うって良いことだよね。 立派じゃなくていい。 誰に届かなくてもいい。 私が思っているだけでいい。 「実弥ー!、琉斗ー!早くー!」 菜莉が呼んでいる。 「今行くー!」 私達の3年間が今始まる。
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