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ばっと視界が開けて、鏡の壁が途切れた。出口だ。
「宝物は見つかりましたか?」
係員に聞かれ、陸は得意げにメダルを手渡す。おめでとうございまーす、そちらは差し上げますという声を聞きながら思う。
宝物を見つけさせてもらったのは、俺の方だ。
ミラーハウスを出ると、真夏の日差しがまた肌を焦がす。眩しい、と目を細める陸に俺のキャップを被せると、陸は嬉しそうにつばの部分を持ち上げて笑いかけた。
目の前には大きな観覧車。ゆっくり回っているように見えて、近くで見ると意外と速い。時間の流れみたいだ。
きっと陸と、そして陸の弟の海と過ごせる時間も、長いようで短い。苦手だなんて言っている暇はたぶん、ない。
俺が彼らと向き合うことで、許せないと思っていた父のことも少しだけ、許せる気がした。理由はうまく説明できないけれど。
「パパ、行こう!」
陸が俺の手を引く。俺もその手を握り返して、観覧車の方へ歩き出した。
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