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「何か分かんないけど大人って大変だね~まぁ大人だからややこしいのか〜」 彼女の言葉に救われた気がした。何だか分からないけど…そんなに気負わなくても良かったんだろうかとすら思えた。 「よしっ、じゃあ一緒にご飯作るよ〜」 ん?聞き間違いか?一緒に作るって言ったのか?なかなか動かない俺に痺れを切らしたのか、さ〜行くよ〜なんて腕を引っ張られキッチンへと連行された。紅は手際良く料理を始めた。俺は言われるがまま食材を切り、洗い物をし配膳までこなした。家ではほぼデリバリーで生きてきた俺にとって料理はかなりハードルが高いことの1つと思っていたけれど、なかなか楽しいかもしれないと新しい扉を開きそうだ。 「ただいまー!誰かお客さん来てるの?」 声がした方がを向くとそこには以前見たよりも大きくなった紫の姿があった。 「えっ!?ちょ…ちょっと!何でユンジュンさんがこんなとこに居るの!?」 驚いている紫ちゃんを横目に紅は、ハイハイ手ぇ洗ってきてからね〜と軽くあしらっている。意外にも素直に言う事を聞いてるところをみると、これは後が怖いなと…嵐の前の静けさというか何というか… 手を洗い終えた紫ちゃんは真っ直ぐに俺の前に来て、どういったご要件ですか…と幾分か硬い表情で聞いてきた。あまりの強い眼差しに怯みそうになったが、ここで逃げる訳にはいかないと…きちんと順を追って説明をした。 「話は分かりました。お母さんを悲しませることだけはしないで下さい。お母さんには幸せになってほしいんです。お母さんとちゃんと向き合って下さい。強がってるけど本当は寂しがり屋だと思うから。」 握っていた手に力が籠もる。生半可な気持ちで来たわけではなかったはずなのに、彼女たちの真っ直ぐな気持ちに言葉が出なかった。何とか出した言葉は… 「約束する…」 たった一言を絞り出すのもやっとだった。 「は〜い、そろそろママン帰って来るからユンジュンさん腹括って〜顔も強張ってるからマッサージして〜笑顔は大事だよ〜」 何だか呑気な声なのに、言ってることはなかなかシビアで…帰って来るって聞いただけで心臓が口から飛び出てきそうなくらい緊張してきた。 謎のカウントダウンが始まった…
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