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13.もうひとりの妖精息子(2)
少女の驚きに、しかし息子は素っ気なく
「いくら王の血筋と言ったところで、もはやそんなものにはなにも意味がないんじゃないかね?この世界で孤独に卵から孵ったということは、われらはアチラ……生物学上の親に捨てられた存在だ。いくら競い合ったところで、王になる可能性なんてないだろう……」
淡々と諭すような口調に、しかし緑髪は
「うるさい!よくもそんなふうに自分を卑下できるな、おまえは!ボクたちは誇り高き******の王子だぞ!」
下から指差し怒る。 その仕草が、みょうにかわいい。
ぷーすけは上から
「とはいえ、捨てられた王子だろう?そんなくだらん過去にこだわるより、今ある現実に目を向けてはどうだ?自分のことを捨てた世界のことになど関わらず、拾ってくれた親に孝行を尽くすのだ。それが子としての喜びだ」
佐和子をギュッと抱きしめ、高らかに宣言する。
(やめて!はずかしい!)
そんなふたりを見上げて、緑髪は
「……へえ、ずいぶんかわった個体だね。それじゃなに?その子がキミの母親ってわけか?」
佐和子をすがめる。
「おまえだとて、拾ってくれた親がいるのだろう?その者に孝行を尽くせ、このわたしのように」
ぷーすけのことばに
「ばかばかしい!ボクたちのような高等な存在が、生まれて初めて見たからとコチラの下等存在を真っ正直に親と認識するだなんて、とんだ痴れ者だ!」
吐き捨てるように言う。
不審に思った佐和子が
「……あなたを拾った親は?」
問うと
「そんなもの!目についたとたん殺してやって、さっぱりしてやったさ!」
美しい顔をゆがませてわらう。
(そんな!妖精を拾って殺されるなんてあるの!?……あたしって、もしかして運が良かったの?)
恐怖に顔をこわばらせる佐和子を抱きつつ、ぷーすけは
「この不孝ものめ。この世において『親の子殺し』は許されても『子の親殺し』など許されんぞ!」
同胞を戒める。
(——いや、どっちもまずいだろ)
赤髪の正論(?)に、緑髪は機嫌悪しく
「ふん!そんな醜い個体を親にするようなものにはわかんねえだろうよ!」
憎まれ口をたたく。
(なんて失礼な奴。さすがのあたしも腹がたつよ……というか、うちの子はもっと怒ってるみたい)
ぷーすけの赤い髪の毛が、逆立ちふるえている。
そして(比喩でなく実際に)目の奥に怒りの炎が盛(さか)ってる。
「ほう……わが母上に危害を加えんとしたうえ悪口(あっこう)をたたくとは、その罪(つみ)万死に値するぞ。きさま」
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