27.文化祭(4)

1/1
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ

27.文化祭(4)

 ぷーすけの火の壁に守られて、少女少年への実害はない。  が、まわり一帯は水分解と水蒸気爆発の衝撃でぐちゃぐちゃだ。  見ると、長髪の水妖のすがたは消えて見る影もない。 「——いっしょに分解したみたいですね」  平然としたぷーすけのことばに 「——もおっ。おそろしい子」  色んな意味を込めて、佐和子はつぶやいた。 「ちっ、『水』め。大きなことを言っていたが、やられたな。軟弱ものが!」  ちくわを相手に有利な戦いを進めていた土の王子が吠えるが 「おまえの相手は俺だよ……」 「……むっ?」  見るといつの間にか、ちくわの操る植物根が土の王子の足元にからまり、動きの邪魔をしている。 「フンッ!こんなものでオレの動きを完全に封じられると思ったか!」  あざけり、怪力にまかせて根を引きちぎる偉丈夫に、  小柄な緑髪少年は 「……完全なんか求めてない。一瞬でいい」 「なにを……うんっ!?」  岩弾を投げつけんと上げた土の王子の上腕が  ——ボトリ  落ちた。  ぷーすけの放つ熱線によって、切断されたのだ。 「くっ!!」 「……あきらめてはどうだね?きみの属性は、相性として私相手では不利だろう」  ぷーすけのことばに、  片腕の王子は 「たしかにおまえのエネルギーは強い……ならばエネルギーの供給源を断てばよい」 (供給源?それって……) 「——まずい!」  ぷーすけがさけぶ間に、土の王子は佐和子むけて突撃するが、それを防いだのは、またしてもちくわ、そして彼が操る植物たちだった。  ボロボロになりながらも土の王子にからみつき、その突進を食い止めたのだ。 「——うっ!?」 「へへっ、生き物の力をなめるなよ。いざとなったら巨石だって持ち上げるんだ!」  少年らしい頑張りで 「わっ!ありがとう、ちくわちゃん!」 「えらいぞ、ちくわ!」  少女少年の感謝と賛辞に鼻をならす。  ぷーすけも 「よく母上の身を守ってくれた」  礼を言うと、ちくわとともに動きを封じられた土の王子に近づき 「……いいかげんあきらめろ。ひとりでわれわれふたりを相手にするのは無理だ」  降伏をうながす。  根が絡まり下を向いていた偉丈夫は、顔を上げると  「……だれが、もうオレしかいないと言った」  ニヤリと笑うと 「勝ったと思って安易に近づきすぎたな」  言ったとたん、その口から鋭い槍状のものが飛び出し、ちくわとぷーすけの胸に突き刺さった!490a0dba-771c-4dd7-b41a-d2f680af6c57 「「ぐはっ!!」」 「ぷーすけ!」「ちくわ!」
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!