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32.王子たち(1)
次の日、文化祭の代休だが直実に呼ばれて佐和子は学校の裏庭に向かった。
昨日の晩は寝ていないが、だからといって来ないという選択肢はなかった。
おそらく同じく一睡もしていない、泣きはらし顔の男子同級生は少女に会うと
「……この子を土に植えようと思うんだ」
ずっとはなさずにぎりしめていたのだろう、ちくわの木の実を見せた。
「正直、土に植えたからって、あの子がもう一度再生して出てくるなんて思ってない。この実に、そんな力をまったく感じないからね。サカイモノじゃないぼくには、そんなことできないんだ」
くやしげに言うと
「ちくわは、親としての力が弱い弱いって、ぼくに文句ばかり言ってた。『おまえは弱すぎるから、いても邪魔なだけだ。自分たちのあらそいに関わるな』って……。
あの子は、口は悪いけどぼくのことをなにより気にかけてくれていた……ほんとうに孝行息子だよ、おまえは」
また涙を流しながら、庭の一角に穴を掘り木の実を植える。
やさしく土をかぶせながら
「せめて、なにかしらの芽が出てくれたらな。毎日、水をやりに来るんだけど……」
つぶやく。
佐和子には、かけることばもない。
そんな、拾い親としての葬礼じみたセレモニーをわびしくおこなっているふたりの背後から
「……そんなことをしても、なにも出んぞ」
陰にこもった声がかけられた。
ふりかえった佐和子が
「——あなたは!?」
と、おどろいたそれは、ぷーすけとちくわを死に追いやった、あのにくたらしい金の王子だった。
「なんでここに!?異界に行ったはずじゃ……?」
と言いつつ、少女は敵の異変に気づいた。
「……あなた、その腕!」
金の王子の左腕、その肘(ひじ)から下がない!
断面も金属光沢を帯びている。
王子は
「——まあな。ちょっとやられてしまった」
その端美(たんび)な口元を色悪くいがめた。
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