7人が本棚に入れています
本棚に追加
妖精息子2の2
それは
「絵里ちゃん」
佐和子のクラスメート・来島(くるしま)絵里(えり)だった。 その横にいるのは化学教諭で演劇部顧問の大田原(おおたわら)先生だ。
「――じゃあ来島さん。その企画はみんなで相談してね」
「はい」
絵里にペーパーを渡すと、大田原教諭は佐和子らを一瞥(いちべつ)。「おはよう」も言わず去っていった。
なぜだろう?佐和子はどうも最近、自分があの女性教師に良い印象を持たれていない……というか、避けられている気がしていた。たしかに自分はド文系で化学は苦手だが、授業はまじめに聞いている。それで疎まれているとは思えない。
どうも、ぷーすけを連れてきていることを心よく思っていないようだ。学校にペットをつれてくるなどゆるせないのかもしれない。
(出会ったころは、気が合う先生だと思ったのに……まあ、しかたないか)
それより今は、朝から絵里が声をかけてくれたことで佐和子のテンションはかなり上がっている。
なにせ、来島絵里は演劇部のスター女優であって、学園内で一番の人気ものだ。
なんといっても美形なので、男子からの告白も相当数あるのに、それを「あたしはみんなの絵里だから」でやりすごすことができる、本物のアイドルだ。
またそんなセリフを言っても嫌味にならない根っからの陽キャなので、女子にも受けがよい。
そんな華やかな絵里と地味な佐和子だが、出会ってすぐに打ち解けた。同じクラスになって間(ま)なしだが、もうすっかり親友……というか、佐和子は絵里の熱烈なファンになっている。気持ちとしては「絵里さまに近づく不逞(ふてい)の輩(やから)はゆるさない!」親衛隊のつもりでいる。
だから、その次に絵里の口から出たことばの意味が、佐和子には最初わからなかった。
「なおくんもいっしょに、どうしたの?」
――なおくん?だれそれ?
思わず一瞬ほうけてしまったが、絵里が見つめる視線の先にいるのは、無心に土をいじる同級生男子のすがたしか……って、なおくんって、なおざね?
最初のコメントを投稿しよう!