妖精息子2の3

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妖精息子2の3

 なんだ?そのどう考えたって、親しい間柄(あいだがら)でしかありえない呼称は。  直実も同じクラスだが、絵里と彼がちゃんと話しているのを佐和子は見たことがない。  先日の文化祭で三人はクラス実行委員だったが、絵里は佐和子としかしゃべらなかったし、直実も佐和子にしか話しかけなかった。  学内一のスター女子と、花に水をやるだけのさえない系男子ではあまりに波長が合わず、ことばをかわすことさえできないのだろうと佐和子は思っていた。 (ただ、直実がさえないといっても、それはまわりの子が思っているだけで、彼にもそれなりの美点があると、多少親しんだ佐和子は知るようになったが)  それにしても (それが……なおくんだと?なに、その「キング・オブ・親近感」な呼び方)  直実は、絵里のことばに反応して、すこしだけ振り返ると、あたりをうかがう小声で 「……なんだよ?学校では声かけるなって言ってあるだろう」  学内一のスター女子に向かって、たしなめるように言った。  タメ口!  それに対して、絵里は 「なによぉ。今はまわりにだれもいないから、いいじゃない。だってもう佐和子ちゃんとなおくん、仲いいんでしょ?ならもう、あたしたちの関係を隠しておく必要なんてないじゃない。いつもどおりにしゃべろうよぉ」  今まで聞いたことのない鼻がかった声を出しながら、ハンカチを出してクラスメイト男子の頬の土を取る。 1282e526-bb62-49a6-b3ca-1217f5de4c72 (あたしがやろうとしたのに……って、それよりカンケイ!?あたしたちの関係って言った?)  スター女子生徒とさえない男子生徒になにか関わりがあるだなんて、想像だにしてなかった。  目を丸くする佐和子を後目(しりめ)に、絵里は 「実は、あたしとなおくんって、幼なじみなんだよ」  いたずらっぽくわらった。  おさななじみ? 「うん。なおくんったら、照れくさがって学校のだれにも言わないようにって、あたしに言うんだけど……佐和子ちゃんなら、あたしたちどっちとも仲良しなんだから、いいよね?」  そう言うと、指に手を当てて 「他の子にはナイショだよ。たとえば、あたしたちがちっちゃいときはいっしょにお風呂に入っていたとか」  おふろ!いっしょにおふろ!  なに?そのラノベに出てくるみたいな幼なじみ!
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