妖精息子2の7

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妖精息子2の7

 自転車少女と飛行王子は、川沿いの団地群の横に広がる公園の樹々のあいだを通りぬけた。  この時間帯は、学校帰りの児童らが遊んでいて、なかなか活気がある。そこをぬけるのが、佐和子のお気に入り帰宅路だった。  ただ、今日は静かなようだ。  だまってそこを通りすぎようとした少女の目の端に 「――えっ?」  映るものがある。  それは、公園の砂場わきにうつぶせ倒れているスーツすがたの男性だった。さすがにこの時刻、会社帰りに呑んだくれて倒れているわけでもあるまい。  思わず自転車を止めてよくよく見直すと、倒れているのは男性だけではない。母子づれや小学生など、公園内にいる人間すべてがぐったり寝そべっている。 「……あれ、寝てると思う?」  息子に問うと 「……どう見ても見ず知らずらしいものたちが、仲良くそろって午睡(ごすい)ですか?それは、なかなかほほえましい光景です」  片頬笑(かたほえ)む。 「……あんた、あたしのことバカにしてるでしょ?」 「滅相もない。ただユニークな視点だと思っただけです」 (こんにゃろ) 「とにかく、放ってもおけないから見にいくよ」  ふたりして近づくと 「死んではいませんね」  ぷーすけのことばどおり、息はある。ただ、やはり通常の睡眠ではなく白目を向いている人もいる。 「どうやら生命力(マナ)が不足したようです」 「なにそれ?わかんないけど、とりあえず……」  救急車を呼ぼう、と言いかけた佐和子のことばをさえぎって 「――これらは、おまえのしわざか?妖魔」  にわかに、背後から居丈高(いたけだか)に問うてきたものがある。  ふりかえ見ると、そこに立っていたのは……302572f2-c380-4ca4-bbb2-d327c78ed7ef モンク・ローブというのだろうか?まるで中世の修道僧が着用するフード付きの茶色い上衣をまとった女性のすがただった。
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