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妖精息子2の8
袖手(しゅうしゅ)しながらのするどい視線の先にいるのは、ぷーすけだ。
「――なぜ、こたえなければならん?」
赤髪の美青年は、不機嫌な返事をする。
(またあんた、そんな喧嘩腰な言いかた。そりゃ、たしかに急に問うてきて失礼だとは思うけどさ)
そんな少女のおたおたを無視して、そのウェーブがかった茶髪の女性は
「……見たところ、そのコチラの少女を使役しているようだが、なにか目的があるのか?」
的はずれなことを言う。
そのことばに、敬親あつき息子は気色ばんで
「わたしが母上を使役だと?貴様、冗談でも言ってはならんことが世にはあるぞ。わたしは子として母上に絶対孝行、絶対服従に決まっているだろう!」
さけぶ。
(やめて。そんな言い方は誤解をまねく。あたしは対等の関係のつもりだから)
女性は、ぷーすけのことばに眉根(まゆね)をよせて
「母?……そうか。貴様が、のんのんが言っていた妖魔の王子か?」
(のんのん?だれそれ?)
「『害はないから手を出すな』と言われたが、やはりあいつのことばは信用ならんな」
倒れる人々を見渡すと
「……コチラモノに手出しするアチラモノは滅さねばならん」
(コチラとかアチラとか知ってるんだ、この人)
かってなことを言いつつ、袖から短い棒を取り出したと思ったら、それは伸びて、先に鋭い刃がついた短い槍になった。そんな物騒なもの、とても一般人が持ち歩くようなものではない。
「……まあ『獣(けもの)』を相手にする前の肩ならしだ。すこし相手をしてやろう」
使い慣れたようすで槍を構える女性に
「――あなた、いったいなんなの?」
佐和子が問うと、
彼女は好戦的な笑みを浮かべて
「そりゃ、狩人(ハンター)さ。ただし、あたしが狩るのは貴様らのような人間(コチラモノ)に害をなすアチラモノだ」
そのことばに、ぷーすけは
「ハンター?ああ。生意気にもわれらを狩ろうとするサカイモノの武闘派集団か……それはともかくとして、母上の眼前にそのような野蛮な道具をさらすな、下郎」
冷え切った表情と真逆の高温の火の玉を掌中(たなうら)に起こす。
「ふんっ!ぬかせ、妖魔が!」
鼻を鳴らす狩人に
「ぷーすけ、やめ……!」
こんなところで人間と喧嘩するなんて。
しかし止めようとした佐和子がみなまで言う、その前に両者は手を振るっていた。
短槍と火球が同時に投擲(とうてき)される!
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