妖精息子2の8

1/1
前へ
/137ページ
次へ

妖精息子2の8

 袖手(しゅうしゅ)しながらのするどい視線の先にいるのは、ぷーすけだ。 「――なぜ、こたえなければならん?」  赤髪の美青年は、不機嫌な返事をする。 (またあんた、そんな喧嘩腰な言いかた。そりゃ、たしかに急に問うてきて失礼だとは思うけどさ)  そんな少女のおたおたを無視して、そのウェーブがかった茶髪の女性は 「……見たところ、そのコチラの少女を使役しているようだが、なにか目的があるのか?」  的はずれなことを言う。  そのことばに、敬親あつき息子は気色ばんで 「わたしが母上を使役だと?貴様、冗談でも言ってはならんことが世にはあるぞ。わたしは子として母上に絶対孝行、絶対服従に決まっているだろう!」  さけぶ。 (やめて。そんな言い方は誤解をまねく。あたしは対等の関係のつもりだから)  女性は、ぷーすけのことばに眉根(まゆね)をよせて 「母?……そうか。貴様が、のんのんが言っていた妖魔の王子か?」 (のんのん?だれそれ?) 「『害はないから手を出すな』と言われたが、やはりあいつのことばは信用ならんな」  倒れる人々を見渡すと 「……コチラモノに手出しするアチラモノは滅さねばならん」 (コチラとかアチラとか知ってるんだ、この人)    かってなことを言いつつ、袖から短い棒を取り出したと思ったら、それは伸びて、先に鋭い刃がついた短い槍になった。そんな物騒なもの、とても一般人が持ち歩くようなものではない。 「……まあ『獣(けもの)』を相手にする前の肩ならしだ。すこし相手をしてやろう」  使い慣れたようすで槍を構える女性に 「――あなた、いったいなんなの?」  佐和子が問うと、  彼女は好戦的な笑みを浮かべて 「そりゃ、狩人(ハンター)さ。ただし、あたしが狩るのは貴様らのような人間(コチラモノ)に害をなすアチラモノだ」  そのことばに、ぷーすけは 「ハンター?ああ。生意気にもわれらを狩ろうとするサカイモノの武闘派集団か……それはともかくとして、母上の眼前にそのような野蛮な道具をさらすな、下郎」  冷え切った表情と真逆の高温の火の玉を掌中(たなうら)に起こす。 4c56add6-f6cd-4dc7-a9b2-87d3d01d2262 「ふんっ!ぬかせ、妖魔が!」  鼻を鳴らす狩人に 「ぷーすけ、やめ……!」  こんなところで人間と喧嘩するなんて。  しかし止めようとした佐和子がみなまで言う、その前に両者は手を振るっていた。  短槍と火球が同時に投擲(とうてき)される!
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加