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25.文化祭(2)
文化祭が終わった次の日は、後片付けだ。
生徒全員での掃除が終わったあとも、実行委員である佐和子と直実はのこってゴミ運びをしないといけない。その後ろには、それぞれの息子たち……ぷーすけとちくわがついている。
「——なんで、あたしたちだけがのこってこんなことまでしないといけないわけ?ゴミの分別はクラス全員の仕事でしょ」
佐和子の不満に
「……まあ実行委員だからね、しかたないよ」
めずらしくも、直実がしおらしいことを言う。
「ぼくは体を使う仕事のほうが楽でいい……それにきみと並んで歩けるなんてうれしいな」
思いがけない男子の好意的なことばに、なれていない少女は顔を赤らめる。
そんな母のすがたに、ぷーすけは機嫌悪しく、ふたりのあいだに身を入れる。
「ナオザネ、おめぇファイア野郎にずいぶん警戒されてるぞ。ママを取られるんじゃないかってな」
後ろからちくわが愉快げに冷やかしていたが
「……って、おい」
急に緊張感のある声を発す。
一同の前に広がるのは
「……霧?」
不自然な水気が、またたくまに視界が隠れるほど濃くなったのだ。
「——ふん、来たか」
ぷーすけはなにごとも無いかのように身から火を出すと、その熱によって四人のまわりの霧が払われた……
その先に立つのは、髪の長い美しき女性(らしきもの)だった。
その髪は青く透明で、まるっきり
「ウンディーネ……絵に書いたような水の精ですな」
ぷーすけのことばに対して、彼女(?)は黙(もだ)しにらんだまま美しい髪をひろめかすと、その髪先に水の玉が浮かんで……
急激な勢いにのって、無数の水弾が佐和子らに襲いかかる!
「……無礼ものですね、挨拶もなく」
ぷーすけが即座に放つ火の玉とぶつかり、相殺される。
無数の火と水がぶつかって、大量の蒸気が発生し視界が悪くなるが、火の王子……ぷーすけには熱センサーでもあるのだろうか、問題なくすべての水弾を防いでいる。
佐和子や直実らがふつうの人間として、せんかた無くこの世ならざる火と水の応酬を見守っていると……
「あぶねえ!」
ちくわの声とともに、ふたりの生徒は植物の枝に巻かれて引っ張られた。
彼らが立っていた通路には、大きな
「……岩?」
砕けたかたまりが叩きつけられている。あんな物が当たっては即死していた。
「あ、ありがとう、ちくわ!」
少女の礼に
「……そんなのはどうでもいい、はやく警戒しろ」
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