26.文化祭(3)

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26.文化祭(3)

 緊張顔の緑髪少年の視線の先に立っているのは、尋常ならざる偉丈夫……巨漢の青年だった。  2メートルぐらいあるんじゃないだろうか。プロレスラーのように……というより、文字どおり巌(いわお)のようなゴツい肉体をして精悍な美青年だ。   まさしく…… 「土属性の王子か。2対1じゃかなわないと思って、相手も組んできやがったってことだな」  ちくわは言いながら植物を引き寄せる。 「——風だけでなく、植物もあやつるか?しかしコチラの植物でオレの攻撃を受け止められるかな?」  そのことばどおり巨漢の男性は、足元から次々と岩石弾を放つ。  ちくわはそれを樹木で受け止めているが、苦しそうだ。そりゃ、木より岩のほうが硬いもの! 「まじぃ——な。相性が悪い」 5b706339-72e8-458b-b438-78fea2f0671e 一方、ぷーすけと水妖のたたかいは、たちこめる蒸気の中で続いている。 「——火が水に勝てると思うか?」  やっとことばを発した長青髪に、  ぷーすけは 「そんなもの、純粋に条件によるのではないかと思うがね……うむ?」  言う間に、赤髪の美青年の周囲を大きな膜が包む。 「ほう。水膜か?」  問うぷーすけに、  水の精は 「酸素が供給されなければ、火は起こせまい。膜で密閉されたその中は、すぐに酸素不足だ。そして代わりにあるのは、水蒸気。たとえ気体であっても『水』分子であるかぎり、それは私の意のままだ」  そのことばどおり、目には見えないが膜の中の水蒸気……水分子が火の精を攻撃しているらしい。  四方八方から圧を受けて、ぷーすけはボコボコだ。 「ぷーすけ!」  佐和子が心配の声を上げるが 「……心配ありませんよ、母上」  息子は落ち着いたもので、ウンディーネに向かうと 「いやはや、なめられたものだね。わたしの扱う『火』は、酸素なしでは成り立たないそんなちゃちなものではないよ。あらゆるものを燃やすエネルギーそのものだ」  目を爛々と赫(あか)く輝かせ 「たしかに属性として水蒸気……水分子は、きみの意のままに動かすことができるだろう……が、それをもっと細かくしてしまったらどうだろう?」  手をふるうと、その身の熱をぐんぐん上げていく。 「な、なんだこの高温は?」  たじろぐ水妖に対して  (声だけは)冷ややかに 「たしか2000℃もあれば、水分子とて水素と酸素に分かれるだろう?」 「そんな!?とても生まれたての存在にあつかえるエネルギーではないぞ!」  絶叫に 「これも母上が私に与えてくださる熱い愛ゆえだ……あっ、母上。あぶないから耳をおふさぎになってください」  息子の注意に、佐和子は 「……えっ?あっ、はい。直実くん!」  あわててクラスメートにも注意したとたん  ——バンッ!!!!!!  水球は激烈な音とともに爆(は)ぜた。
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