4. 木崎 聖子(きざき せいこ)

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 ふたりがいつから男女の関係になったのかはわからない。だが『ヨギちゃん』がカウンターに座っているあいだの木崎は、市川の高感度センサーの針が振り切れてどこかへぶっ飛んでいきそうな勢いだった。  去年の12月、木崎の前妻が竜を木崎に預けた時から、ふたりの関係は大きく変化したようだ。市川はこのまま三人家族になればいいのにと夢想したりしていたが、事はそれほど単純ではなかったらしい。日に日に、木崎の表情が苦しそうになっていったからだ。聖子が竜の面倒を見るようになって、木崎はますます嬉しくなる一方だろうと予想していたのに、思い悩んだ憂い顔の木崎を見る時間が長くなるにつれ、市川の驚きと不安と疑問はどんどんと膨れあがっていった。  その後、何があったのか詳しくは知らない。だが、めでたく入籍し、これで八方丸く収まったと思ったのは、どうやら市川ひとりだけだったようだ。来店する常連客たちに次々に報告しているところを見ると、木崎と聖子の関係に薄々勘づいていた人たちも、祝福半分、不安半分といった雰囲気で、市川は物足りなさと歯痒さでじっとしていられない気分にさせられた。
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