4. 木崎 聖子(きざき せいこ)

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「だから、何を言ったのか、って訊いた。そしたら、コンプレックスのカケラもないような顔して、って……」  そうか、可奈もあのひと言が毒矢になっていたことはわかっていたのか。「あっちゃー、だよね。知らないまま、どまんなかを射抜いちゃった」 「ヨギさんは、なんて……」 「可奈ちゃんが謝りたいのなら、橋渡しはする。だけど、わたしを通して謝罪を伝えてくれっていうのなら、それは断る。謝罪は直接しなきゃ意味がない」 「ですよね……」 「可奈ちゃんから連絡は?」  市川が小刻みに首を左右に振った。 「でさ、その時に、余計なお世話かと思ったけど、ちょっと説教していいかな、って。人間、外っかわ見てるだけじゃわかんないもんなんだよ、ってね。誰にだってコンプレックスのひとつやふたつ、あって当たり前でしょって。なんかさあ……、あんたのことなのに、わたしが口惜しくなっちゃってさ。あんたの苦労が踏みにじられたみたいな気分で……」 「ほんと……、すみません」 「だからあ、あんたが謝ることないんだって。でさ、その時にね、可奈ちゃんが、市川くんのコンプレックスって、ひょっとしたらお母さんに関係してますか、って」
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