4. 木崎 聖子(きざき せいこ)

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 聖子と市川のスマートフォンで、木崎と聖子、木崎と市川、そして3人の写真を撮った。 「じゃあ、車、気をつけて帰ってよ」  木崎がキスしようと近づけた顔を、聖子が「ごちそうは帰ってから」と、平手で押し返し、みんなの笑いを誘った。  聖子が、よろしくお願いします、と深々と頭を下げて、あわただしい挨拶の時間が終わった。  暗い静かな坂道を駐車場へと登る。街灯は遠く、車も滅多に通らない。  みんなにうまく溶け込んでるみたいですね、そこは客商売で鍛えてるから、などとぽつぽつと言葉を交わしながら、無駄に広い道路を、少し距離を取って並んでゆっくりゆっくり歩いた。 「新しい店でも着ればいいのに、コックコート。やっぱ、似合うなあ」と、市川が言うと、そうだね、という気のない返事が聞こえ、すぐに「市川くん……、好きなら、ちゃんと言わなきゃ」と、息の混じった声がした。  坂道、結構きついもんな、と思いながら、そうですね、と応えた。 「ちゃんと言わないと、伝わらないよ」 「そうですよね。うん……、だけど、誰に言ったらいいんだろ」 「え、誰、って……、そりゃあ、本人に決まってるじゃない」 「本人、なあ……。でも俺、よくわかんなかったし」 「え……、なんで……」 「なんでって……、それは、誰が誰やら」 「はあ?」 「いや、誰がパティシエさんだったのかな、って……」 「はい? え? ちょっと、あんた、なんの話してんの」  聖子の足が止まった。
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