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「はあ……。なんか、ごめんね。すんごい恥ずかしい。ブンブン空まわちゃって」
「あ、いえ……。あの……、俺は、可奈ちゃんとは長く友だちでいられると思ってました。可奈ちゃんもそうだと、俺は思ってました。たぶん、可奈ちゃんは俺のこと、男としては見てなかったと思います」
あのギラギラ男の姿が浮かんだ。ああいうのが好きなんだったら俺は論外だ。歳上で包容力のある、ってやつだ。
「そう……なんだよねえ。わたしもそう感じてたんだよねえ。でもなあ、意外な組み合わせって、あるもんだからさあ……。ああ、くっそー。惨敗じゃん」
「え、何が」
「いや、いいんだよ。こっちの話。で、その事情って?」
「ああ……。そもそもは、俺が可奈ちゃんの、その、秘密っていうか、まあ、そういうのを偶然、ほんとにたまたま、知っちゃったってことがあって……」
「秘密……」
「ええ……。あ、でも、それがどういうのか、っていうのは……」
「ああ、それはいい。それはいいんだけど、それって、例の可奈ちゃんの『絶交宣言』のあとの話?」
「そうです。えっと、7月の……、大学が夏休みに入った直後、ですね。それで、しばらく悩んだんですけど、その……、可奈ちゃんの気持ち、というか、何を考えてるのか知りたくて、でも着信拒否だしブロックだし、もうこれは直接会うしかない、って……、来ちゃったんですよね、ここに」
「ここ?」
「ええ……、ここです。まさに、ここ。この駐車場」と、暗い車内から外を見まわした。
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