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桃枝さんの絵
白川さんはときどき立ってうーんと体を伸ばしたり、水分をとったりして、また座った。
絵は半身像と決め、二人の共同作業は根を詰めずゆっくり進めていった。病院通い、買い物や気晴らしの外出、大学、バイトなどしながらだった。
六月の蒸し蒸しする日は白川さんはすぐに疲れて、絵はほとんど進まなかった。
梅雨明けの暑い日には昼食に揖保乃糸を茹でた。
「岳ちゃん、庭からおネギを取ってきてくれる?」
東京でこのソーメンが食べたくて母に送ってもらったものよ。違いますか向こうのと。そりゃ違うわよ揖保乃糸はコシがしっかりしててほんとに美味しいもの。
庭の木陰に卓をしつらえ、流れでソーメンを洗って食べながら、ゆっくり午後のひとときを過ごした。
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