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お昼休みに、鈴木くん
お昼休みのときだった。
ピコン。
と、チャットアプリの着信音が鳴って、
「あっ」
思わず声が出ちゃった。だって、鈴木くんからだったから。
写メが添付されていた。朝のHR(ホームルーム)前、私が『ほしい』って言っちゃった写メ。
良かった、送ってくれて。
私は内心ほっとしていた。だって鈴木くん、午前中は、授業の後の休憩中、真面目か、って言いたくなるくらい、スマホをいじったり、見たりしないんだよ。いつもどおりの、おっとりしたモブ男子に戻ってたし。
(一時間目の授業後の私の気持ち)
『あれ? 鈴木くん、写メ送ってくれない? スマホ触んないし』
(二時間目の授業後の私の気持ち)
『あれ? スマホまた触んないじゃん。いつ送ってくれるんだろ?』
(三時間目の授業後の私の気持ち)
『ま、真面目か! ちょっとくらいスマホ触りなさいよッ! てか、いつ写メおくってくれるの!?』
(四時間目の授業後、お昼行くときの私の気持ち)
『むぅ~……、ふん、もう良いし。あんなに嬉しそうな顔して『良いよ』って言ってくれたのに……』
と、私は不満と不安のせいで、ちょっとご立腹だったから。
ピコン。
《鈴木です。一条さんの欲しいって言っていた写メを送ります。朝に言っていたのに、お昼休みになってすみません! それから、欲しいって言ってくれてすごく嬉しかったです。一条さんの、お気に入りの写メになってくれたら幸いです。m(_ _)m》
ふふっ、なにこの丁寧な感じ。やばっ、ウケる。鈴木くんぽいなぁ。
「な~に、ニヤ付いてんのよ、華」
「えっ!?」
学食で、一緒にお昼ご飯を食べていた玲奈が不気味に笑っていた。や、やばっ、玲奈のことちょっと忘れてた。
「ちょっと良いことあったみたいじゃん?」
「そんなわけないし」
「ふ〜ん? じゃあ何でスマホ隠したし」
「うっ……、そんなことしてないし」
「くくくっ」
玲奈が小さく笑う。あっ、なんかちょっとムカつくんですけど。
すると玲奈がぐいっと顔を寄せてきた。な、何よ。
「ねぇ、ねぇ、なんなのか教えてよ」
「だ、だ〜からぁ、何にもないし。華わかんなぁ〜い」
「あっ、出た腹黒悪魔系の華さん」
おい、小悪魔可愛い系だっての。
私が訂正しようとしたとき、
「玲奈センパイ〜!」
「うんにゃ? おー、どした可愛い後輩達よ」
私たちのそばに、玲奈の後輩がやってきた。女子バスケの子達だ。
「男子バスケ部が、また勝手に体育館の使用日時変えてるんですよ。文句言ってもスルーしてきて……」
「あちゃ〜、またそんなことしてくる?」
よっと、と言って、席を立つ玲奈。
「華、ごめんね。ちょっと先行くわ」
「ううん、良いって、いってらっしゃ〜い」
うへへ、助かったぁ。
「……、華、あんた助かったぁ、って顔に書いてるよ」
「何言ってるかわかんなぁ〜い」
「たく、絶対教えてもらうからね。んじゃ、また」
「はいは〜い」
玲奈が後輩達と一緒に学食から出て行く。
さて、私はどうしょうか。
スマホのチャットアプリをまた起動する。
鈴木くんのメッセージ。
「……、まあ返信でもしますか」
何て返そう。…………、あれ、意外と思い浮かばない。
「う〜ん……、あっ、そうだ」
直接会って言おう。だって、私、鈴木くんにだいぶ焦らされたからねっ。ちょっと、仕返ししないと。うん、それで良いかも。
私はそんな意地悪なことを思いながら、鈴木くんが送ってくれた写メを眺めていた。
「ふふっ、イルカ、かっわいい♡」
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