19人が本棚に入れています
本棚に追加
「兄貴、超絶音痴じゃん」
「!!!」
ぐさぁっと言葉が胸に突き刺さる。
……そう、そうなんだ。
俺、実はびっくりするほどの音痴なのだ。
あれは家族でカラオケしに行った時のこと。
お母さんもお父さんも弟も80~90点を取る中、俺だけ50~60点という。
しかも俺が歌うと皆耳を抑えてしまうのだった。
「い、いや!そ、それもこれから頑張って練習する!!」
「まぁ…そうだね…。すごく大変だと思うけど…。
でも、兄貴が決めた道ならどんなことでも俺は応援するから。頑張ってね」
ここまで話してもまだ信じられないという顔をしていたが、それでも最終的にはそう言ってくれた。
やっぱり弟はいい子だ。そして出来すぎ君だ。
「うぅ…ありがとう龍…!じゃあ、お母さんにも言ってくる!!」
「うん、いってらー」
龍からのエールを貰い、単純な俺はがぜんやる気が出る。
それから弟の頭をわしゃわしゃ撫でると、謎のガッツポーズをして、意気揚々と階段を駆け下りて台所に向かった。
「…兄貴、こういう時の行動力はほんとすごいよな…」
開きっぱなしのドアを見ながら、困ったような笑顔で龍はそうつぶやいた。
最初のコメントを投稿しよう!