146  勧誘

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「それで、ご用件って。二つあるとおっしゃってましたが…」 「あ、ああ。座ってくれ。ここにいるメンバーを紹介する。向かって右からジャネット。書記だ。リスモン。同じく書記。ドレウス。連絡調整官。次がエイリエッタ、会計だ。そしてわたしの隣が副会長のシモンズだ。左は各委員会のメンバーだ。魔法管理委員会タチアナ。学生自治委員会ウェイブス。施設管理委員会オルソン。そして代表執行委員会と監査委員会兼務のリスティアルス。以上が中央執行委員会のメンバーで、これを学生総括会という。ちなみに自治委員会の下部組織が学生総括騎士団で、学院の風紀秩序、そして内外の事故・事件に即応するよう組織化されている」 つまり生徒会ってわけね。了解した。 「そして現在空席になっているのが代議員会なのだが、それを舞美さんにやってもらいたいんだ」 「は?どういうことですか?」 「代議員とはつまりクラスの代表だ。そのトップになっていただきたい」 「いや、理由がわかりません。あたし、まだこの学院に入ったばかりでよくみんなのことや学院のこと知りませんから」 「これは王族の義務でもある。したがって君もその例外ではない。ついでにそちらの方も、副委員長になっていただく」 横から副会長のシモンズが言ってきた。なにか偉そうだ。 「ついでとはごあいさつね。あんたなにもん?」 「気に障ったら失礼。しかしわれわれ中央執行委員会が決定したことだ。いやなら学院から出て行ってもらう」 「なんだと」 「シモンズ、やめなさい」 「しかしお嬢様」 「ここではお嬢様とは呼ばないで」 ステファニーさんがきつい目でシモンズを睨んでいる。 「ふん、だからなによ。そんなもんであたしたちを縛るってか?笑わせるわ」 「ちょっと、シャロネット、なに言ってるのよ」 「ああ、舞美は甘ちゃんだからいいようになると思ったのかも知れないが、王族舐めんな!てめえらみたいなゴミは叩き出して、すっきり綺麗にした方がいいって判断だが、文句はねえな?」 「それはどういう意味だ?」 副会長のシモンズっていう三年生がシャロネットを睨みつけてそう言った。 「はあ?王族とはなんだ?いいかよく聞け。王族は国だ。国家なんだよ!その国民たるてめえらがいちいち国家に制約かけようってか?笑わせるぜ。王の意思はたとえそれが正しくても間違っても、黙って従うのが臣下以下、国民の義務ってやつじゃねえのか?あのよ、王ってなんだ?女王ってなんだ?その世界で一番力があり、一番偉いやつの称号だ。わかるか?その称号の下には海があんだよ。そいつは真っ赤な海さ。そりゃそうだ。そいつは血の海だからな。王ってのはそんな血の海から這い上がってきたやつの称号なんだよっ!」 いやだそんな称号。てか、なにその前時代的封建思想。ついて行けない。 「あっははははは。吠えるねえ、さすが大国の王女さまだ」 「てめえ、舐めると痛い目見さすぞ」 「ちょっと、やめなよシャロネット」 「うっさい、舞美は黙ってて。いまここで舐められるわけにはいかないの」 「舐めてなどいない」 ずっと黙っていたリスティアルスという三年生が言った。 「はあ、なによあんた。じゃあ何だって言うのよ」 「正直われわれはきみたちを侮っていた。それは国王の婚約者たるマミさまに対してもだ。われわれ、いや国民ほとんどがあなたたちの力を知らなさすぎだ。これはおそらく王室にある特務機関が優秀だと、今はそう思っている。彼らは見事に隠蔽に成功していたのだ」 エルメルダさんたちの顔が浮かんだ。いい仕事してるよ、サイモン機関。 「マミさまの一件、そして君たち。従来王族というものは王のまわりの小賢しき人種であって、けっして真の力あるものではなかった。しかしそれを否定するに余りある現実をまざまざと見せつけられたのだ。たしかにシャロネットどのがもし本気なら、われわれの首などあっという間に飛んでしまう、そうおっしゃられている、のですよね」 「ふん、妙に素直に下手に出るわね。どういう魂胆かしら」 「魂胆なんてない。ただ、われらは危機感を抱いたんだ」 「危機感?」 「そう。われわれはたぶん、マミさまの機嫌を損ねた」 「はあ?なにやったのよ」 「それは…、マミさまの排斥を公認したからだ。いや、公認はしていないが、黙認という形でわれわれは口をつぐんだ。それがどういう結果になったかは、みなが知るところだ」 まあ自業自得じゃないの、それ。なんにしてもマミさんはこいつらを許さないとは思うけど、そんなにこの人たちに関心なんてあるのかなあ…。
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