147  エスコートの権利

1/1
前へ
/815ページ
次へ

147  エスコートの権利

「だからわれわれに、学生総括会に入れと?少しでもマミさまの矛先が鈍るようにあたしたちを取り込もうと?小賢しいのはあんたたちよ!マミさまはそういうのが一番嫌いなのよ」 シャロネットは嫌味たっぷりに、しかも高飛車に言った。上級生もいるのに仕方ない子。 でもそれは違う。マミさんはたぶんどうでもいいと思っている。キリス兄さんが絡まない限り、それはなんの意味もないことなのだ。ただ向かってきたから払う、それだけだったはずだ。それを知らないシャロネットじゃないはず。 「わかった。もういい。われらが間違っていた。王族方を懐柔しようと思ったのは間違いだったのだ。われわれは思いあがっていたのが充分わかった」 「そう、それじゃ宣告の日が来るのを楽しみに待っているのね」 リスティアルスとステファニーは顔を伏せた。なんか気の毒になってしまった。 「いいわ。あたしやるわ。代議員会委員長」 「え?」 もうしょうがない。これは人助けよ。 「ちょっと舞美!」 「いいの、シャロネット。王族なら王族らしくその責務を全うする。そうじゃない?」 「う、それは…」 「あ、ありがとう、舞美さん」 ステファニーさんが泣いて言ってくる。泣いた顔も美しいなあ。 「で、ふたつ目のことって?」 「あ、ああ。それはね、聖リレント復活祭のダンスパーティーの、舞美さんをエスコートする権利を、舞美さんがその一員であるこの生徒総括会が有し、復活祭の前夜祭でその権利を争奪するチャンスをみなに与える、その公平なルールによって。しかしてそれは複合的かつ多種にわたる知力・体力・そして勇気を試させるもの!」 「ちょっと、なに言ってるの?」 「つまるところ舞美争奪超人トライアスロン、ていうのを開催して、あなたのエスコート権を目指してもらえば、学院内の騒ぎも収まるというわけよ」 バカだ、こいつら。信じられない。 「そんなのはお断りします!」 「いえ、無理。あなたはもう役員なんですから」 「きったないわね!」 「それしかこの騒ぎを治めることができないのよ。力足らずだっていうのはわかっているから、だからこうして無い知恵絞りだして、あなたにお願いしてるんじゃない」 ああ、すべてあたしが悪いってか。しょうがないなあ。 「はあ、わかったわ」 「恩に着るわ、舞美さん」 ステファニーさんはさっきまでの悲壮な顔つきとは裏腹に、いまはすっごく美しい顔をしていた。まあ、騙されたようなもんだけど、みんながほっとしているならそれでいいか。 いいわけなかった。聖リレント復活祭は、とんでもないことになっていった。
/815ページ

最初のコメントを投稿しよう!

167人が本棚に入れています
本棚に追加