150  見てなさい

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150  見てなさい

「どうやら決まったみたいね」 総括会長のステファニーさんが安心したようにあたしにそう言った。 「ステファニーさん、コースはあらかじめ設定してます。ここに地図がありますから、それに沿って下さい」 「あら、ちゃんとお仕事はするのね。まあいやいやでしょうけど」 「こんなはずではなかったですけれどね」 「人生、意外なことが多いのよ。まあ、たかだかダンスパーティーのエスコートを選ぶんだから、ほんとはたいしたことじゃないんだけどね」 「たいしたことじゃないことをたいしたことにした兄に報いを」 「物騒なこと言ってんじゃないわよ」 しょげ切ったあたしを総括騎士団の人たちが講義室まで送ってくれた。ビーツロッドさんはおろおろしっぱなしだったが、あたしはもう気に掛ける余裕がなかった。まったくどいつもこいつも勝手なことばっかり言いやがって。くっそー、このままあたしが景品にされて、どこの誰かわからないやつにダンスパーティーのお相手にさせられるなんて。もう許せない。いいわよ、こっちにも考えがあるわ。いいわマミさん、あたしらしくね。わかったわよ! ウインデルは婚約式のときと同じく大いににぎわっていた。この城塞都市中がお祭り騒ぎとなり、いたるところに出店やバザーが開かれた。三日間の聖リレント復活祭に国中、いや外国からも王都にたくさんの人が訪れていた。 「すごい人出ね。バカみたい」 「なんか投げやりね、舞美」 「あんたはいいわよ、シャロネット。そうやって出店で買ったシーカー鳥のローストほおばって幸せそうな顔してれば」 「あんただって食べてんじゃない」 「うっさいわね」 「にしてもあんた、ずいぶん余裕じゃない?なに考えてんのよ」 「ふっふっふ。まあ見ていなさいって」 あたしは焼き鳥をくわえながらニヒルに笑った。 「あんたときどき恐ろしく見えるときがあるよ」 「気のせいよ」 ぜったい気のせいじゃないとシャロネットは思った。あのえげつない魔法といい、それを裏打ちするような突拍子もない考え方…。舞美がいた異世界というところには、国王のキリスみたいなとんでもない人たちが、きっとゴロゴロいるんだろう。 「とにかく明日は前夜祭。まあ景品のあんたはみんなの必死な形相を高みの見物ってわけね」 「ふふふ、それはどうかしらね。この景品ちゃんは、ふつうの景品ちゃんとはわけが違うからね」 「どういう意味よ」 「それは明日のお楽しみ。ああ、あしたは晴れるといいわね!」 それはみごとな夕焼けだった。いや、あまりにみごとすぎる、夕焼けだ。
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