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154 俺、やっちまった!
「キリスさま」
全員がその場に膝をついた。あーあ、バレちゃった。なんでだろ?
「あ、エミリーナ。なんでバレた?」
「あんた魔素吸いまくって、一度も魔法使わなかったじゃない。罠だって魔法じゃなくナイフで破ってるし、いい加減バレるわ」
「いやそれにしたって…」
「しかもマミさまを倒してる。あんなバレバレの手で。マミさんはあんたがキリスさまだってことに気がついて、わざと倒されたんじゃないの?」
「そうなのか。そういやそうか。いやにあっさりと勝てたからおかしいなと思った」
呆れるエミリーナの横で執行委員のステファニーがニコニコと笑っている。
「ということで王よ、あなたの優勝はありません」
「え?なんで」
「ルール違反だからです」
「な、何にもルールなんて破っちゃいねえぞ。いい加減なこと言うな」
「そもそもこのレースは、魔法使い、魔法士、魔導師が参加条件です。あなたは魔法を無効化できても魔法使いじゃないじゃないですか!」
「あ、あれ?」
「参加資格がもとからないんですよ」
「あー、やっちまった?俺」
「はい。完璧に」
そんなわけであたしを賭けたレースは優勝者が不在のまま終了してしまった。だからあたしをエスコートしてくれる人は決まらず、結局ダンスパーティーにはシャロネットたちや友だちみんなと一緒に行った。
マミさんはキリス兄さんと仲良く踊っている。すごい素敵だった。あたしはいろいろな人と踊った。ビーツロッドさんが真っ赤になってダンスを申し込んできたのが笑った。すっごく楽しかった。それでもあたしはちょっと探しちゃっていた。あいつは来てないのかな?あの悪魔王子。
「ぼくと踊ってくれませんか、姫さま」
「あ?」
デルフィ。カーテンの影から現れた。なんでそんなところにいたのかわからなかったが、なんだかちょっとうれしかった。そういえば罠で吹っ飛ばされたんじゃなかったっけ?怪我は大したことなかったのかな?ううむ、素顔だからイケメンっぷりが半端ない。女子たちの黄色い声が聞こえる。まあ、あんたって罪なやつね、デルフィ。
「姫さまっ!舞美姫っ!そやつから離れてくださいっ!危険です」
パリエスが近衛騎士団を大勢引き連れパーティー会場に突入してきた。いったい何の騒ぎなのかしら?
「は?」
「そいつは悪魔なのですぞっ!」
え、マジで?悪魔って…。
あたしとデルフィは立ちつくしていた。女の子の悲鳴と、剣を抜き駆けつける近衛騎士たちの足音が聞こえた。
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