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「ぼくの名前はなんでしょう!」
太陽傾く西の空。朝焼け公園に伸びるは4つの影。
「ええとねえ、君はゲンタくん。確か昨日は、砂場でお山を作っていたねえ」
「あたり!」
サイズの異なる影の持ち主は、その大概が小学生。
「じゃあわたしの名前は覚えてる?」
立て続けに質問をされた老婆は、ベンチで幾らか前のめりになると、半分ほどしか開いていない濁った瞳を、ひとりの少女へと向けた。
「あーはいはい、覚えてますよ。あなたはユカちゃん。小学5年生ね」
「あったりー!」
2問連続で正解した老婆を前に、ゲンタとユカは、パチンと手と手を合わせて喜ぶ。
「じゃあわたしは?わたしーっ」
ゲンタの妹のナナコもまた、自身を指さし老婆に尋ねる。いつの間にやら閉じられていたのは、老婆の濁ったふたつの瞳。それを薄ら開けた老婆は、面前の女の子をまじまじ見つめた。
「あなたはカナコちゃん」
その瞬間、ナナコの頬がぶうっと膨らむ。
「ちがうよおばあちゃんっ。わたしの名前はナナコだよ、なにぬねのの、ナ!」
「ああ、そうだそうだナナコちゃん。ずいぶん背が伸びたんだねえ」
「ええっ。昨日も会ったのにい?」
あはははと、たった4人の笑い声でも、この小さな朝焼け公園を包むのには十分。
茜色の空では1羽のカラスがカアと鳴き、今日という日の終わりを告げた。
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