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「じゃあおばあちゃん、ぼくがおばあちゃんの家族になるよ。今日からぼくは、おばあちゃんの孫ねっ」
すくっとベンチから立ち上がったゲンタは、老婆の前で腰を落とす。
「おばあちゃんの家族は、小学5年生の大野ゲンタ。あ、そうだ。小学1年生になったばかりのナナコもいるよ。少しわがままな妹だけど」
ゲンタには、老婆がきょとんとしているように見えた。もしかしたら今喋っていることの半分も理解していないかもしれないな、とも思ったが、彼は続けた。
「友だちのユカも、今度連れてくるね。同い年の幼なじみなんだ。だからおばあちゃんの孫は、ぼくとナナコとユカの3人っ。ぼくたちは今日から家族。約束だよっ」
小指を立てたゲンタのその指先をじいっと見つめたかと思えば、老婆はおもむろに、ゲンタの頭に手を乗せた。
「カンタ君、ありがとうねえ」
「ゲンタだよ」
「まあ、ゲンタ君っていうの。はじめまして」
「さっきからずっと喋ってたじゃん」
「あら、そう。何年生?」
温もりを失った枯れ枝をかき集めてできたような老婆の手は、ゲンタの頭を我が孫のように撫でていた。
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