一年後

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 その日の夜から兄に勉強を見てもらい一年時の休学する迄の復習を休み中にする事になった。 復学していきなりついていけないのが困るからという思いと、修吾を探す時間も必要だからだ。 「ねぇ、令亜?スマホって一年間の間にどう?メール凄い?」 柚葉はスマホは放っておくとどうなるの?と興味深げに令亜に見せてと頼んで来た。令亜はスマホのロックを外して改めてまだ見ていないメールを開く。 「ん?まぁ…ニュース見た同級生から生きてる?とか死んだ?とか…ん?これ誰だ?失礼なヤツだな。あとは…インスタのDMに…」 「令亜インスタやってたの?高校からインキャ気味だったのに。」 「…誰がインキャよ?中学の時にアカウント作ってそのまま放置だったのよ。ストーリーズも大して投稿して居なかったし。てかしてないか。」 「そうなんだ。で、DM誰?」 柚葉は興味津々に身を乗り出して聞いてくる。 令亜はDMを開けると令亜と当事者でしかわからない明治時代を過ごした時の事が書いてある。 『令亜、戻って来たか?もしこのDMを見てるなら無事に令亜は現代へ戻って来られたんだね。良かった。 先ずは体があって良かったな。凄く心配していたもんな(笑)  レイさんはあの後無事に目を覚まして…婚約者と結婚出来てとても幸せそうだった。俺の事は知り合いくらいの接し方になってた。だから令亜はもう居なくなったんだって直ぐに分かったんだ。      令亜、俺も頑張って医師になったよ。それと…命を繋がないと令亜に未来で出会えないから…結婚もした。ごめん。でもそのおかげで俺はまた伊野尾家に生まれた。まぁ選んだんだけど(笑)そうじゃないと令亜が俺の事見つけられないと思ったから。  俺の名前は今もまた修吾だよ。当時と同じでそのままだよ。何か生まれる前に親の夢枕に立って修吾って名前をつけろって言ったらしい。それで無事に修吾と名付けてもらえた。本当かどうかはわからないけどね。  そういえば…令亜、君は気付いていなかったよな。俺もお前と同じ中学の弓道部だったのを。学年が2つ離れているからあまり接する機会も無くて…挨拶程度だったよな?その頃には俺は前世の記憶はしっかり有った。けど、中学の時に令亜にそれは言わなかった。そりゃそうだよな。言ったらただの頭おかしいやつだから。頭イカれてる変態とかってフラグ立てられるだろうし、将来令亜に迷惑をかける事になる!と思ったから…だから凄く我慢していた。普通に話したかったのに話せなかった。口を滑らしそうだったから。他のヤツが令亜と話していると…殴りたくなった(笑)けど令亜はまだ明治に行ってないんだって自分に言い聞かせていた。  令亜、もう我慢できない、会いたい。早く令亜を抱きしめたい。あの時出来なかった事をこの世界で令亜と沢山したい。このDMを見たらこの電話番号に連絡してもらえるかな?ずっと待ってる。     修吾』 令亜は読んでいる途中から涙を流していた。修吾が存在している。その事実が令亜を奮い立たせる。 「…修吾からだ…ねぇ!柚葉!伊野尾先輩って…弓道部の…2つ上の!覚えてる?」 令亜は柚葉を見ると柚葉は頭を抱えて考え出した。 「えー?!伊野尾先輩って、あの暗い人?!メガネかけてたぁ?!」 「え?そうだっけ?暗い…人?てか、居た?!」 「令亜、さりげなく酷いよね…ねぇ令亜、とりあえずさ早くその番号に電話して見なよ!」 令亜は頷き、緊張して震える手でスマホをタップする。 押し終えてスピーカーを耳に当てる。 何コールかした後、少し低めの落ち着いた声が聞こえて来た。 あの頃と同じ…修吾の声だ。 『…令亜?』 「…修吾?」 『お帰り、令亜。』 「ただいま、修吾。長い間待たせてごめんね。」 『はは。すっげ待ってた。それより体は?大丈夫?傷は…令亜の兄さんが優秀な外科医だから綺麗にオペしてくれたよな?』 「…知ってるんだ。お兄ちゃんの事。」 『うん…俺の兄貴と同期だって聞いてた。めちゃくちゃ優秀って。なぁ令亜?』 「ん。何?」 『明日…会える?』 「うん。何処へ行けばいい?」 『そうだな…俺らが通っていた中学校でもいい?正門前。その方が近いし…令亜危なくないだろ?』 「もぅ、子供じゃないし歩くだけなら大丈夫よ。」 互いが通っていた中学で待ち合わせる事になった。 電話を切った後、令亜は心臓の鼓動がわかるほどドキドキしていた。 「柚葉っ!!お姉さまっ!!」 「何?妹よ!!…てかさ、また服でしょ?」 柚葉は令亜のクローゼットを開けて、adidasのパーカーとスキニーを出した。 「いつもと…一緒じゃん…。」 「それでいいのよ。修吾さんはどんな人だった?」 「口が悪くてさっぱりしていて、でも本当はめちゃくちゃ優しくて…。ツンデレ?」 「ねえ!イケメン!?」 「うん。当時にしては珍しい韓国男子ヘアスタイル。」 「いけてんやん!」 「うん。」 「令亜、運命の人だから…くれぐれもヘマしない様にね!」 柚葉は笑いながら令亜の背中をバシバシと叩き、その後恋バナに花が咲いた。
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