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動き出した時間
翌日
「令亜!ファイティン!!」
「車や…周りの状況には気を付けて。」
「お兄ちゃん…心配しすぎ…ジェットコースターの事故は特殊過ぎだから。」
令亜は若干シスコン気味の朔弥にアホかと言い、柚葉は令亜に頑張れとエールを送り心配性の朔弥と見送ってくれた。
中学の頃の通学路をゆっくりと歩く。
木枯らしが吹き寒かったが、修吾に会えると思うとウキウキしてスキップしそうなくらいだった。
歩いて数分後、中学校の正門までのストレートラインに出ると背の高い青年が立っていた。見覚えのある背格好をしている。
「あ…修吾だ…顔変わってない…」
令亜は走り出す。
息も切れそうなほどにダッシュで走ると、修吾も令亜に気付き、令亜に向かって走り出す。
「修吾!!」
令亜は修吾の胸に飛び込んだ。
「令亜。…会いたかった。150年振り?」
修吾は令亜の顔を見つめ、明治時代から計算するとザッとそんなもん?と笑う。
「ねぇ、何で同じ中学だったのにせめて仲良くしてくれなかったの?!」
令亜は膨れる。
「ねぇ令亜は俺の存在覚えてた?」
「…いや…ごめんなさい。実はわからなくて…柚葉に頑張って思い出してもらって…結論がメガネかけてて暗い人?!だった。」
令亜が恐る恐る見上げて言うと修吾は笑い出す。
「すっげ覚え方してたんだな!田村。」
「うん。柚葉は目のつけ所が違うから。」
令亜は大笑いし、修吾もつられて笑い出した。
正門前で立ち話もと言い、2人は校庭へ移動して部活をしている生徒達を眺めながら話しを始めた。
「あの時、私が探すって言ったのに…結局修吾の方が先に私の事見つけてたなんて…何か悔しい。」
令亜は膨れ顔になって修吾を上目遣いで見ると、修吾は笑い、あの頃の様に令亜の頭をぽんぽんする。
「俺が記憶があって、令亜の2つ上だからな。それにたまたま同じ学区だったからだよ。一目見て令亜だって直ぐに分かった。」
「何か…ずるい。あ!あと向こうで私の弓見た時に修吾私の事ヘッタくそな弓引きだな!って言ったわよね?!」
「あー…覚えていたんだ。」
「中学の時もそう思って見ていたの?!」
「いや、そんな事思ってなかったよ。努力家だなって思ってた。」
「ほんと?」
令亜は横目で修吾をチラッと見ると修吾は肩をすくめ、拗ねる令亜と手を繋いだ。
「あと…可愛いなって思ってた。」
「もぉ!ばかっ!」
照れる令亜に修吾は愛おしい気持ちで思わず顔が綻んでしまう。
そして令亜があの時代から消えてからの話を修吾はし始めた。
「あの後さ…令亜も歴史で知っているだろうけど、いくつも戦争やら、歴史的な変革がいくつもあってさ。俺も家族も一次大戦の時には疎開したんだ。そこで傷付いた兵士の手当てや病気の治療とかして…第二次世界大戦の頃には俺も結構爺さんでさ。戦後10年した頃かな?この世での役目を終えて天国へ旅立ったんだ。」
「そっか…修吾、第二次世界大戦を経験してるんだ…。一番大変な時よね。世界中が目茶苦茶だった。」
「ああ。レイさんの親父さんは大正時代にはもう亡くなっていて…一次大戦の戦争でレイさんの嫁ぎ先も…全て焼けて無くなった。旦那さんも戦死したんだ。だからレイさんは子供を連れて実家に戻って来て筒井姓に戻してその後は静かに暮らしてたよ。」
「…そうなんだ。私の前世?も大変だったのね。」
「今でも令亜の身に起こったあの時の事は何だったのか俺もわからない。でも確かな事は俺と令亜があの時あの場で確実に出会った事。そして今…時を越えてまた会えて、お互いを運命の相手だと確信した事だよな。」
「運命ね…修吾ってロマンチストね。あの頃の修吾とは大違い…でもないか?」
「こら!はは…令亜、これからずっと俺と一緒に生きてくれる?メガネかけた暗い先輩だけど。」
修吾は笑いながら令亜に聞く。
「修吾、あとで柚葉叱っといて。家にお兄ちゃんと居るから。」
「ねぇ令亜、返事は?田村の話は後でいいから。」
修吾は令亜の髪を優しく撫でて令亜を抱き寄せる。
「うん…修吾もずっと一緒に居てね。今世では2人で頑張って医師になって…それで結婚して、可愛い子供作ろうね。」
「こ…子供?!お…おう!任せとけ!」
修吾は今も昔も、あの頃と変わらない笑顔で150年越しに令亜に口づけた。
終
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